「女支配国物語」
Text by 祐介
第2回・・・恥辱の英雄

 男支配国と女支配国。男と女の戦いは、一進一退の苛烈な攻防が繰り広げら
れていた。
「隊長! もう限界です・・・!」
「何を言うの! 男なんかに屈していいの? あなたは!」
「し、しかし・・・!」
 最前線となったこの村では、男が圧倒的優位に立っていた。
「進め! 我らが勝利はすぐ目の前にあるぞ!」
 騎馬にまたがり、剣を振りかざしてそう叫ぶのは、男支配国の中では「英雄」
と呼ばれる男、ジルクであった。
 その青年は、痩身の身体に青の鎧を纏い、女性のような美しい顔立ちをして
いる。しかし、そんな外見からは到底想像もできないような剣さばきで、次々
と女兵士たちを打ち倒していった。
 そんな彼に引っ張られるように、男支配国の兵士たちは勇猛果敢に、女たち
に襲いかかる。女たちは、成す術もなく、鮮血とともに地面に倒れ伏す。
「隊長・・・!」
「く・・・!」
 この数ヶ月間、連戦連勝を続けていた女支配国においては珍しい、完全な負
け戦であった。
「あの村の女性たちは、今頃男どもに・・・」
 わずかの兵士たちとともに退却する女たち。彼女たちはともかく、逃げ遅れ
た兵士、そして逃げられぬ村の女たちの運命は、絶望的であった。
 しかし、その先頭で騎馬を駆る隊長は、歯ぎしりしながらも、こう言った。
「今のうちに、せいぜい勝利に溺れてるがいいわ・・・
 英雄だか何だか知らないけど、私たちには、エルナ様が・・・
 エルナ王女がいるんだから・・・」
 
 英雄と王女との戦いは、早くも訪れた。
 英雄ジルクの快進撃は、これまでのエルナ王女の活躍をすべて帳消しにする
ほどの勢いで、最前線に位置する女支配国の街や村は、次々と男たちの手に落
ちていった。
 これまでエルナ率いる精鋭部隊は、男支配国の首都を一直線に目指していた
のだが、このままでは自分たちの首都が危うくなる・・・エルナたちは、ジル
クを討つべく、進路を180度転換したのであった・・・
 
「・・・しかし、ホントお調子者ね、男って生き物は」
 戦況を見つめながら、女支配国王女エルナはつぶやいた。
 戦場は、やや大きな街。つい数日前、ジルク軍によって占領されたばかりの
所であった。そこへ休む間も無く、エルナ軍の来襲・・・街はもちろん、ジル
ク軍は疲弊しているはずであった・・・
 しかし、戦況はまったくの互角。疲労を高い士気で覆い隠し、男たちは女た
ちに向かっていた。
 しかし、未だ戦火の及ばぬ最後尾の地点で、騎馬にまたがり、悠然と男と女
の死闘を見つめるエルナの瞳は、冷淡そのものだった。
 彼女は、側近の女たちに語り掛ける。
「見てご覧なさいよ、男たちのあの姿・・・私たちが倒してきた男たちとは、
まるで別の生き物みたいに見えるでしょう?
 でもね、結局、同じなのよ。
 ひとたび弱みを握られたら、途端に男はその本性をさらけ出すの。
 ・・・見たいでしょう? その醜い変わり様を・・・?」
 ようやくエルナの瞳に、熱い意志が現れる。
「英雄だか何だか知らないけど・・・
 所詮、男は男よ」
 手綱を強く引き、エルナは前線へと駆け出した。
「気を付けろ! エルナだぞ!」
「遂に来たか・・・魔女エルナが・・・!」
 彼女の姿を見て、一瞬男たちは色めきたった・・・が、
「うろたえるな! 今の我らなら、魔女と言えども恐るるに足らず!
 私に続け!」
 早くも前線で奮闘していたジルクの一喝で、再び男たちは勢いを取り戻す。
「ふん・・・ナマイキね」
 あざけるような笑みとともに、エルナは剣を振るう。無謀にも飛び掛かって
来る男たちは、あえなく寸断されてしまう。
「・・・お前が、魔女エルナか」
「魔女、ねぇ・・・悪くないわね、そのネーミングも」
「お前だけが我らの敵・・・本来、女など男の敵ではないのだ」
「それって私のセリフじゃない?」
 敵意剥き出しのジルクに対し、エルナは飄々とした態度で、挑発をかわす。
「ごたくはいいからさ、そろそろケリ、つけましょうよ。
 あんまり男を殺しすぎると、後の楽しみが減っちゃうからね」
「・・・望むところだ」
 激しい戦いの最中、英雄と王女は激突した。
 エルナが繰り出す剣をジルクがかわす。
 ジルクが振り下ろす剣をエルナが受け止める。
 互角の好勝負・・・に見えた。
「ちょっと、本気でやってるの?」
「・・・何!?」
 横から繰り出された剣を弾き返しながらのエルナの意外な言葉に、ジルクは
驚愕の声をあげる。
「は・・・それは何かの詐術か? そんな言葉で私を動揺させようとしても」
「そんなせこい真似しないわよ。
 それとも貴方、私が本気でやってるとでも思ってるの?」
 その言葉に、ジルクの美顔が歪む。
「・・・なら、見せてもらおうか。お前の本気とやらを・・・」
 渾身の力を込め、ジルクは、エルナに向けて剣を振り下ろす。隙の無い構え、
スピードも段違いである。
 しかし、その一撃を、エルナは軽々と受け止めた。剣と剣がぶつかる、甲高
い金属音が戦場に響く。
「な・・・」
「いくら剣技が優れててもねぇ・・・そんな力じゃ、無意味よ」
 その言葉を証明するように、エルナが力を込めると、徐々にジルクの剣と身
体は後退していく。
「ば、馬鹿な・・・女に・・・」
 そんな台詞も虚しく、ほぼ同じ体格の女性に力で押されるジルク。
 そして、エルナが更に力を込めて剣を押すと、遂に堪えきれなくなったジル
クがよろめく。その隙を逃さず、エルナが剣を軽く払った。
 軽い金属音とともに、ジルクの手から剣が奪われる。
「・・・く・・・!」
「英雄ジルクが敗れたぞ!」
「エルナ王女の勝利だ!」
 女たちの声が戦場を駆け抜ける。すると男たちは目に見えて動揺し、一気に
士気を失ってしまう。
 勝敗は決した。
「どうやら、貴方だけが私たちの敵だったみたいね」
「・・・・・・!」
 地面に膝を付き、歯噛みするジルクに、冷ややかな言葉を投げるエルナ。
 うろたえ、逃げ惑い、後ろから女兵士に斬りつけられる男兵士たちの醜態を
見つめながら、エルナはさらに言葉を続けた。
「やっぱりいいわねぇ・・・男のああいう姿は」
 
「まぁ・・・子供だったの? 英雄さん?」
 エルナはじめ、女たちのあざけりの視線が、ジルクに注がれる。
 今回の戦いでは、双方ともに死傷者が多かった事と、エルナの希望により、
辱めを受ける敗者は、大将ただひとりとなった。
 ほんの数刻前まで戦場だった街の大通りに、ジルクはすべての衣服をはぎ取
られ、その裸体を晒していた。さらに、両手は後ろに縛られているので、最も
恥ずかしい部分を隠す事もできない。
「どうしたの? 英雄さん・・・足は縛ってないんだから、歩けるでしょ?
逃げたければ逃げてもいいのよ」
 エルナの言葉にも、ジルクは反応を見せない。ただ両足をもじもじさせて、
必死に股間を隠そうとするのみである。
 その姿は、とても英雄と呼ばれた男のものではなかった。
「肌も白くてスベスベね。間違えて男に生まれた、って感じだわ。
 でも、それより何より・・・その子供みたいなオチンチンね」
 その言葉に、ビクッと身体を震わせるジルク。必死に隠そうとするが、36
0度くまなく注がれる視線から逃れる術は無かった。
「先っぽまで皮を被って・・・可愛いオチンチンね」
 エルナの言葉に、一斉に笑いが巻き起こる。
 その言葉通り、ジルクのペニスは、まったく亀頭の露出していない、子供並
の包茎ペニスだった。
「そんなみっともないオチンチンで、よく英雄だなんて呼ばれてたものね。
 さあ、貴方の情けないその姿、町中の人に見てもらいましょう」
 槍を構えたふたりの女兵士が、ジルクの後ろに付く。それに急かされ、ジル
クはおどおどと前進する。
 街の大通りの両脇は、女性たちで埋め尽くされていた。そんな中を、全裸で
歩く、かつての英雄。
「英雄も形無しね。ホントに英雄だったら、自殺とかしない? でも出来ない
んでしょ? そんな可愛らしいオチンチンの男の子だもんねぇ・・・死ぬのな
んて怖くてできないわよねぇ・・・ねえ、英雄さん?」
 笑い声、あざけり、罵り、そしてエルナの言葉・・・それらに晒されたジル
クのペニスは、徐々に反応を示し始め、遂には勃起してしまう。
「ほぉら・・・やっぱり貴方もただの男。こんな屈辱的な行為で感じてしまう
変態さんなのよ。
 でも、勃起してもまだ皮を被ってるなんて・・・情けない英雄さんねぇ」
「う・・・あぁ・・・」
 歩くたびに、勃起した包茎ペニスが揺れ、それが女たちの笑いを誘う。その
笑いが、さらにジルクの全身を駆け抜け、ペニスを刺激した。
「んああぁ・・・っ!」
「あらイヤだ。触られもしないのにイッちゃったの? 皮被りのオチンチンで
も一人前にイクんだ・・・馬鹿にされてそんなに気持ちよかった?」
 それからエルナは、再び勃起したジルクのペニスの包皮を紐で縛り、その紐
の先を持って、ジルクと共に行進した。時々エルナが紐を引っ張ると、ジルク
は切なげな声をあげ、包茎ペニスをビクビクと震わせる。
「・・・ほら、言ってごらんなさい」
「うぅ・・・僕は英雄と呼ばれてたけど、実は子供みたいな情けない包茎チン
ポなんです・・・女の人に馬鹿にされて感じる、へ、変態なんです・・・ぅあ
あぁっ!」
 二度めの射精は、先を縛られていたため、ほとんど精液が飛び出ず、わずか
に開いた口からピュッと白い液体が吹き出すというものだった。
「情けない英雄さんねぇ」
 その言葉に、再び勃起するジルクの包茎ペニス。
「ん・・・あぁぁ・・・」
「何? どうして欲しいの?」
「もっとイカせて・・・オチンチンから精液もっと出したい・・・です・・・」
「ふふ・・・いいわよ・・・貴方の本当の姿を、私たちの前にさらけ出したら
ね・・・どうせ貴方は、それだけで何度もイッちゃうんでしょ?」
「あ・・・ああぁ・・・」
 男支配国の命運は、英雄の崩壊によって、決した・・・
 
                【第2回 終】


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