MIX FIGHT今昔物語
Text by UU
 その14「エルマVSおれ」

 今回は、AVにもなっている「血桜組」(雑誌「ミストレス」にも連載中)のルー
ツとも言うべき作品をご紹介します。(内容も酷似していますので、この作品が元に
なっているのは間違いないと思います)
 「その12」で予告した田沼醜男の作品、「サスペンスマガジン」昭和40年11
月号、「赤いパンチ」です。
 最初から、ご紹介します。
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 おれたちアドニス高校の番長は、サリーだ。女の子の番長なんて、ほかに聞いたこ
とがないけれど、とてもよく治まっていて、だれも反抗する者なんかいやしない。サ
リーは、一年女子のくせに、176センチもあって、おれたち三年生だけど、そばへ
行くと、肩くらいまでしかないので、恥ずかしくなってしまう。(中略)
 サリーたちは、自分たちのことを「血桜団」と呼んでいる。
 この血桜団のうち、主だったメンバーの、サリー、ローザ、エルマ、ケティ、キャ
ナリィといった面々九人が、いっぺんに入学して来たのだから、おれたち三年男子は
もちろん、先生たちまで、いくじなく、オロオロしていた。(中略)
 まず、番長のトムが血まつりにあげられた。
 血桜団は、てんでに野球のバットやチェーンを振りまわしてボクシング部になぐり
こみをかけたのだ。
 トムは、練習中だったので、トレパン姿のまま、近くの空地に、引っ立てられて行
った。(中略)
 サリーは、目に凄艶な表情をたたえ、刃渡り15センチもあろうかと思われる、ド
スを逆手に、トムに詰め寄った。(中略)
 トムは、どぎもを抜かれて、逃げだそうとしたが、血桜のほかの九人がやにわにお
どりかかった。
 トムは、ひとたまりもなく、ねじ伏せられ、なぐる、蹴るの暴行を受けて、這いつ
くばった。
 その首根っこを、ハイヒールでグイグイ踏んずけてサリーたちは嘲笑った。(中略)
「さァ、三年の野郎ども、血桜団に文句のあるやつは、相手になってやる!」(中略)
 おれたちは、どぎもを抜かれて、他愛なく地べたに這いつくばり、彼女たちのハイ
ヒールをなめた。
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 てなことで・・(笑)。
 この血桜団の中でもひときわ兇暴で知られるエルマに、「おれ」は、目をつけられ
ます。
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「よろこびな、エルマがよ。お前とゴロまきたいんだってサ」
「ゴ、ゴロまくって?」
「殺し合いの喧嘩だよ」
 ケティが、眼をギラギラ光らせていった。
「そ、そんな・・」
 おれは、あわてていった。
 血桜の中でも、兇暴をもって鳴るエルマに、おれが向かって行くなんて・・。
 おれは、そっと、エルマのほうをうかがった。
 エルマは、腕組みしたまま、切れ長の眼でジッと、おれをみつめていた。
 おれはふるえあがった。
「ぼくはやりたくない」
「エルマがやりたいっていってるんだ」
 ケティがどなった。
「お前、男のくせに、女に喧嘩売られて、逃げる気かヨ!」
「(中略)、殺しちゃえ!」
「ま、まって下さい!」
 おれはうめいた。(中略)
「エルマと・・やります」
 おれは、蒼ざめて答えた。
 (中略)血桜団は、おれに服装を指定した。
 真っ赤な色のサポーターがそれだった。
 足は、ハダシでなければならないといいう。
 それにひきかえ、エルマの服装はイカしていた。
 ゆったりした黒いトックリ・セーターに、切れ込みの深い白パンティ。
 そして、ほとんど膝ちかくまである、ブーツをはいていた。
 すでに服装からして、勝敗は決まっているようなものだった。(中略)
「年令は?」
「15歳」
 リンとした声で、エルマが答えた。
「19歳」
 蚊の鳴くような声で、おれがいった。
「身長は?」
「172センチ」
 と、エルマ。
「164センチ」
 と、おれ。
「体重は?」
「65キロ」
 と、エルマ。
「52キロ」
 と、おれ。
 そのたびに、見物の間から、クスクス笑いが洩れた。(中略)
「エルマ」
 ささやくと、エルマは、キッとして、おれを見おろした。
「おれ、負けるからサ、てむかいなんか、しないからサ。できるだけ簡単に、あんま
り痛くしないで・・たのむよ」
「バッキャロ!」
 エルマの眼は、憤りに燃えていた。
「お前も男だろ。堂々と向かってきたらいいじゃないか」
「た、たのむよ、エルマ・・すこしは、手加減して・・」
「覚悟してろヨ、お前が、そんなこというの聞いたからにゃ、本当に殺してやる!」
(中略)「無制限一本勝負!」
 カーン!とナンシーが、ゴングを鳴らした。(中略)
 おれの眼は、すでに恐怖のあまり、かすんでいた。
 その視野に、エルマの黒いセーターが、とびこんできた。
 ガキッ、ガキッ!・・ 
 と、五、六発的確なパンチが、おれの鼻面に鳴った。(中略)
 もう目の前がまっくらで、ヨロヨロしながら立っているだけだった。(中略)
「むかってこい、この野郎!」
 エルマはボクサーみたいにかまえながらいった。(中略)
 エルマは、再び攻撃を開始した。
 しかも、おれがダウンしないように、おれを太い樹の股に押しこみ、猫がネズミを
なぶように、一発、一発、ゆっくりと体重をかけて打ちこんでくるのだった。
 涙と、鼻血と、ヨダレが、とめどなく流れた。
 (中略)、おれをぶンなぐるエルマの姿が、スロー・モーションの映画みたいに見
えた。
 そのエルマがニヤリと笑った。
 そして、ブーツの中から、なにか光るものを出したようだった。
 放心状態だったおれも、それがなんだかわかるとゾッとして総毛立った。
「ジャックナイフのエルマ」の異名は(中略)、恐怖の的だった。(中略)
「ゆ、ゆるして下さい!」
 おれは、必死に哀願した。
「そいつだけは・・かんにん」
「殺すわヨ」
 エルマは、低い声でいうと、切れ長の眼で、ジッとおれを見すえた。
 おれは、全身の力が抜けて、ガタガタふるえだした。
 ふるえながらもエルマの眼が、すごくきれいだと思った。
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 田沼醜男の年下の背の高い女の子にやられる、年上のチビ男、ってテーマは、この
「Girl Beats Boy」の趣向に、合うところがありますね。
 この作品には、山田彬弘の洒落た挿し絵がついています。

 お次は、「風俗奇譚」昭和47年7月号、「御園慎介〜奇妙な下宿人(下)」より。
 泥棒の汚名を着た「ぼく」は、有閑夫人たちの奴隷となり、美しい令嬢の「おもち
ゃ」にされます。 
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 時田家の令嬢は、大学で護身術の合気道を習ったことがあるので、ときどき、おも
しろ半分に、奴隷相手にけいこをする。男性対女性の闘技といっても、ぼくのほうは
後ろ手錠をかけられ、50センチ間隔の足カセの鎖をまとわされているのでとうてい
かなうはずもなかった。セーターにミニ・スカートという軽装の令嬢は、突進して来
るぼくのからだに足払いを食わせて倒したり、背負い投げを食わせたりする。ぼくが
土間の上にあっさりのびると、
「さあ、お立ち、弱虫だね」
 とむりやり首輪をつかんで引き起こされる。同じことが何度か繰り返されると、ぼ
くは虫の息になって土間の上に長くなってのびてしまうのだ。令嬢は、男奴隷がもう
起き上がる元気がないと知ると、ぼくのからだの上に馬乗りになっていう。
「さあ、どう?まだ手向かう元気があって?それとも降参するか」
 とくいそうに、かわいい鼻をうごめかせて意気揚々としている美少女の表情を下か
ら見上げながら、ぼくは、息たえだえで、やっと答える。
「はい。降参します」
「ふん。まだ反省の色が見えないわよ。おまえなんか虫ケラ以下の奴隷なんだからね。
生かそうと殺そうと、あたしのかってなのよ」
 令嬢はねちねちと言って、白い手のひらでぼくののどを絞めはじめる。後ろ手錠を
かけられたぼくは抵抗することも許されずに、ただ、ひたすら哀願するほかはない。
「どうか、命ばかりはお助けください」
「女王様、とお言い」
「はい。女王様」
 やっと女王様は、ぼくのからだの上から立ち上がった。僕は引き起こされて正座す
ると、額を地面にすりつけて許しを請わされるのだ。
「よし。ごほうびをやるから、上を向いて口をお開き。はずしたら承知しないよ」
 ぼくが言われたとおりすると、令嬢は、黒くつぶらなひとみで、いたずらっぽく笑
って、赤い唇をとがらせると、ツバキをペッと吐いた。落下してきた生ま暖かい液体
を、ぼくは貴重なものを押しいただくようにゆっくりと味わいながら、のどものに流
し込むのだ。
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 長い作品なのですが、そのうちの、ほんのさわりです。
 私の好み(笑)なので、ご紹介しました。

>>読んでみたい人へ
 やはり「風俗資料館」を、お勧めします。
>>UU短信
 多忙と風邪ひきで、何も出来ないでいます。もうちょっとしたらヒマになりますの
で(多分)、また「クォンタムリープ」等、創作の方でも、復帰したいと思っていま
す。もう少々、お待ち下さい・・。

 その14は、「エルマVSおれ(赤いパンチ)」からのご紹介でした。(文章中敬
称略)


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