MIX FIGHT今昔物語
Text by UU
 その15「パンチ集」

 今回は、先日の「ビンタ特集」に続く、「パンチ特集」でお送りします。
 美しい女性から加えられる殴打。こぶし打ち。我ら格闘Mにとって、しびれるほど
に憧れる、まさに極め付きの暴力行為に違いありません。(笑)
 さて、ご紹介の前に、この「MIX FIGHT 今昔物語」について、ひとこと。
 元来この企画は、格闘Mに関するものなら、古今東西、どんなものでも取り上げ、
ご紹介して行こうという趣旨でスタートしました。話の順序として、古いモノからご
紹介しただけでありまして・・。(汗)
 それが何時の間にか、それにかかりっきりになりまして・・。今や、「文献派」な
んていう有り難い範疇に所属させて頂いておりますが・・。(笑)
 元々は、新しい漫画やアニメ、映画、TVなどからも、紹介させていただくつもり
でおったわけです。
 しかし、その後、次々と新設されましたM関係のWEBにおいて、既に紹介されて
しまった奴がかなりありまして・・。
 んなわけで、少々手遅れかも知れませんが、多少軌道修正してお送りします。その
つもりで、お楽しみ下さい。(笑)

 さて、本題の「パンチ特集」です。
 さすがに普通の女性が、男に殴打を喰らわすって状況は、なかなかありそうにあり
ません。ただ、最近、アメリカの映画では、女性が男を殴り倒すのは、割と普通に行
われておりますので、これからに期待、っつうところです。
 そんなわけで、映画では、山のようにありますが、個人的に私が気に入ってるのは、
シンディ・クロフォード主演の映画「フェア・ゲーム」です。
 危険な真似をした恋人役の刑事に対する叱責、激しいビンタに続いて、シンディの
右ストレートが2発炸裂しますが、の後、「Had enough?」 いやー、良いです。
 最近の漫画からは、「PERIDOT〜こばやしひよこ」を、ご紹介。
 駿河マヒルは、巨乳の上に、短いスカートから覗く太腿に、重量感があって(笑)、
私の好きなタイプです。
 彼女は、包帯を巻いた拳で、相手を打ち倒しますが、第2巻では、卑劣な男を捕ま
えて、制裁を加えます。「金ならあるぞ。いくら欲しいんだ」と迫る男に対して、
「金なんか興味ないね。ただあんたをぶんなぐりたいだけさ・・」そして逃げようと
する男の髪の毛を掴んで、「ニッ」と笑みを浮かべた後、右フックが顔面に炸裂!!
たった一発で、醜く潰れる男の顔。いやー、マヒルさん、サイコー。(笑) 

 「文献派」に戻ります。(笑)
 その5で、ご紹介した「坂口安吾」の作品「ニューフェイス」から。
 相撲取りを引退して、料理屋を始めた千鳥波。彼は、新しく雇った女給が、自分の
贔屓の旦那方の前で、彼らが一番嫌っているソプラノの金切声を上げたのを見て、逆
上します。さては悪友のシン公の指図で来たスパイに違いないと、彼女を詰問します。
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 首をつかんでフリ廻しても答えない。アゴに手をかけて、グイと口をあけさせても
答えない。もっとも、それでは声がでないワケでもある。
「白状しないか。しぶとい奴だ。このアマめ」
 顔をひきよせて睨みつける。女の顔が口惜しさにゆがんだ。突然キリリと女の顔の
ひきしまった刹那、千鳥波の手をくぐって、女の肢体がマリのようにはずんだ。
「ウムム」
 千鳥波の巨体が虚空をつかんで畳の上にはじかれて、のびている。ミゾオチにスト
レートをくらったのである。年来の牛飲馬食で、巨体のくせに胃のもろいこと話にな
らない。小娘の一撃だけでアッサリとノックアウトのていたらくである。
 ソプラノ嬢はハヤテの如く襲いかかって、千鳥波の鼻、口、ホッペタのあたりをつ
かんで、肉をむしりあげる。それがすむと、アゴを狙ってアッパーカットをポンポン
と五ツ六ツくらわせる。その構えと云い狙い、速力、その道の習練のほどを示してい
る。
 ウムム、アウ、ウウと、穏やかならぬ物音であるから、三人の旦那がのぞいてみる
と、これはしたり、ノビているのは巨人の方だ。(中略)
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 彼女も、シンちゃんに騙されていた、と、わかり、二人は和解しますが、千鳥波は
この自分を打ち倒した彼女のチャーミングさに、惚れてしまいます。(笑)

 さて、お次は、「風俗奇譚」昭和36年10月号より「女旅役者花木一座」
 この作品には、男のボクサーを殴っている女性ボクサーの絵がついています。ひょ
っとしたら日本最古のMIX FIGHT ボクシングシーンかも、知れません。(笑)
 女座長のいる一座で、彼女達に虐げられる役をやってみたい、と、「おれ」は、花
木一座に入り込みます。
 そこには、「女対男のボクシング八回戦」という出し物がありました。
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 女ボクサーをやるのは、一座の娘役スターで、座長の妹分になっている水上かおる
だった。
 座長がくずれかけた大輪の花の色気なら、かおるには、烈日に咲きくるめくヒマワ
リのような、いまをさかりの肉感がある。
 きたえあげた踊り子のようにひきしまった四肢の彼女が舞台に姿をあらわすと、客
席はやじることも忘れてシンと息をのんだ。
 そして死闘ラウンドのすえ、相手の男ボクサーは、かおるのグローブのまえに、K
O(ノックアウト)されてしまうのだ。(中略)
 そのエキシビジョンで、いつもKOされるやろうを演るサブちゃんが、軽井沢のス
ケート場にあそびにいって足首をねんざした。
 そのおかげで、おれのところに代役がまわってくることになった。
 おれが新米だというので、リハーサルがわりのスパーリングをやることになった。
(中略)
「本気でいくわよ。だから梶さん(おれの本名は梶村という)もその気でうっといで」
 勝ち気なかおるはそういうと、くちびるをうすくゆがめてグローブを構えた。
 スパーをやってみておどろいた。
「たかが女じゃないか」
 内心そう思っていたおれの予想は、完全にハグらかされたのだ。
 そのシャープなカウンターブロウやフック、アッパーなど多彩な攻撃は、適確(ママ)
におれのボディやチンをとらえ、熱風のようにリングをかきまわした。
 ことに、かおるのフットワークはすばらしかった。
 おれはゲンワクされ、うたれ、そしてロープにつまった。(中略)
 「これはえらいことだな」
 一瞬、おれは動揺した。
 そこにスキがあったのだろう。
 おれのボディに熱いものがサク烈した。
 ちょうどミゾオチのところだった。
「ウン」
 おれは、ひざからマットにくずれおちた。
 そしてヒル寝でもするように、ゆっくりマットの上に長くなった。その目の前に、
なおもかるく動いているかおるの脚があった。
 なんという、よくのびた、ひきしまった脚だろう。(中略)
「この脚が、おれをマットに沈めたのだ。(中略)」
 おれは、ウットリと、そんなことを考えているのだった。 

 ボクシングは、よく客にうけた。
 そのためには、打ちあいはリアルなものでなければならなかった。(中略)
 かおるの動きが鋭いので、おれは、そんなに骨を折らずに、もっともらしくなぐら
れることができた。
 ちょっとガードを乱すか、ダッキングのタイミングをはずせばよかった。すると、
かおるは、その一瞬の虚を見のがさず、適確におれのボディや顔に、切れのいいショ
ート・パンチをきめこんだ。
 (中略)エキシビジョンはいつも、かおるの勝利でおわった。
 それから、勝利者の、敗者に対する、あくことのない凌辱がはじまる。
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 次も、「風俗奇譚」昭和38年7月号「男がほうびをもらうとき」。
 この作品にも、女性ボクサーが男を殴っているシーンの絵があって、ひょっとした
ら、日本で2番目に古い・・、もぅ良いか・・。(笑)
 「おれ」は打たれてばかりいる四回戦の弱いプロボクサー、シロー。今日も、さん
ざん打たれてのKO負け。しかし、恋人の耀子は、「おれ」がそんな負け方をするた
びに、大喜びで、「おれ」に、ごほうびをくれるのだった。
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 おれがそんな負け方をした晩は、耀子は、とてもゴキゲンだった。
 目はつぶれ、見るも無惨に変形したおれの顔に、おしみなくキスをあたえた。
(中略)
「さあ、きょうはよくたたかったから、ごほうびにいいことをしてあげましょうね」
と、耀子は言った。(中略)
 おれは、おれ自身のまっかな8オンスのグローブをつける。耀子は彼女に特別にあ
つらえた、あかるいグリーンの、かわいらしいグローブをつける。
 おれは、あおむけに、木の長いイスに寝て、足首や、胴や、首のところを、ロープ
でイスにしばりつけられる。グローブをつけた手も、いっしょに縛りつけられてしま
った。(中略)
 そうやっておいて、ゴングと共に、耀子の攻撃がはじまるのだ。
 そのときの耀子は、グローブの色にあわせたあわいグリーンの紗のパンティをつけ、
胸のところは乳ぶさが揺れないように、共色の布でしっかりホールドしていた。
(中略)おれをそうやって縛りつけて自由をきかなくすると、耀子は、グローブをつ
けた腕を二、三回大きくスイングさせた。それから、
「さあ、いくわよ」
 といって、おれの顔といわず、からだといわず、パンチの雨をふらせた。
 (中略)なにぶんにも、さっきグローブをまじえたばかりであり、しかもKOを喫
している。(中略)顔はまだはれあがったままで、口をきこうにも、ろくに口を動か
せないほどだった。
 そんなわけだから、女の子のパンチといえども、バカにならなかった。こっちの抵
抗がないものだから、耀子は、サンドバッグでも打つように、力をため、思い切って
ふるってきた。
 それにつれて、香水のにおいがふんわりと揺れた。そのにおいは甘く、そしてパン
チはきびしかった。おれは、
「うっ」
 と声を出して、顔をしかめた。ずーん、と骨の髄までしみ透るような甘美な衝撃だ
った。
 耀子は、またからだの位置を変えて、ボディーをうってきた。(中略)
 息をつめ、その攻撃に耐えたが、よく体重ののった一撃をうけると、
「うーん」
 とうなってしまった。(中略)
 その恍惚の中で、耀子の攻撃は、なおもつづけられた。(中略)
「あ、あ、もう、だ・め・だ」
(中略)、耀子のパンチが思いきりおれのジョウをとらえた(中略)。
                               >>>>>>>
 はい次(笑)。昭和42年「サスペンスマガジン」所載の「毛皮を着たヴィナス」。
 これは現在、沼正三を名乗っている天野哲夫が、水尾究というペンネームで書いた
作品(天野には、他に黒田史郎というペンネームもあります)で、マゾッホの剽窃文
としても、お粗末な内容ですが・・。
 若く美しい女王、岡田リマ子に、奴隷として忠節を誓う「私」。どうぞ鞭で叩いて
下さい、と、お願いしますが・・。
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 岡田リマ子は、微笑を浮かべて私を見ていたが、
「困った方、ほんとに。だけど、もうここには鞭はないわ。(中略)」
「いいです。残念ですが、鞭でなくとも、その白いお手で、思いっきりなぐって下さ
い」
「次から次にあなたは、いろんな注文をつけるのね。生意気だわよ。奴隷のくせに!」
 リマ子の眉根が、いきなりキリキリと吊り上がった。同時に彼女は、あっという間
もなく、不意に平手で私の左頬を打った。派手な音で頬が鳴った。(中略)
「そんなにまで、ひどい目に会いたいのなら・・」
 彼女は、いきなり足をあげて、私の肩口のあたりを蹴りつけた。(中略)わたしは
肩口を蹴られて、よろよろとよろけ、思わずシリモチをついた。
「なんてブザマな!(中略)さあ、立ちなさい。立てといったら立つの」
 おどおどしながら立ち上がったハナ先に、リマ子の平手がとんだ。そしてコブシと、
代わる代わる派手な音を立てて、私の目元に火花が散った。(中略)
「人をなぐるってのは、おもしろいものね。やっとわたしにもわかりだしたわ。もう
一つなぐるわよ」
 猛烈なコブシ打ちだった。自分で自分の力に驚いたようななぐり方だ。(中略)私
はアゴの骨の激痛を覚え、半ば恐れるように顔をしかめた。
「こんなことが、お前にとってうれしいとはね。いいわ。痛快よ」
                               >>>>>>>
 最後はやはり、「おげんこつ作家」(?)、夏木青嵐(「MX今昔その7」も、ご
覧下さい)に締めて貰いましょう。
 彼のMF小説のデビュー作でもある「若奥様と男奴隷」(「風俗奇譚」昭和48年
7月号)から。
 23歳の美しいバーのマダム、啓子に一目惚れし、求婚までした河原でしたが、豪
奢なそのバーに通うために彼は、アルバイト先で、使い込みをしてしまいます。逮捕
された彼は、大学の後輩、時郎に助けられ、富裕な彼の家に住み込みで働くことにな
ります。その時、啓子は既に、時朗の妻になっていました。
 勝ち気な啓子の下で、厳しく躾けられ、禁欲生活を強いられた彼は、彼女の下ばき
を盗んでしまい、それを咎められて、彼女から、厳しい折檻を受けます。
>>>>>>
 啓子は、黒のスリップ一枚だった。革イスにかけて、形よく脚を組んでいる。レー
スのすそは白い太ももの上にめくれ、まばゆいような曲線美が、伏せた河原の額の前
面にクローズアップされていた。(中略)
 堅い床板の上に、かしこまって正座している河原の額は、ちょうど革イスの彼女の
あらわな膝の前だった。
「どうした、こらっ」
 ものさしが、彼の額で、二度、三度とかん高く鳴った。
「はいっ」
「はいじゃない」
 今度は裸の右肩を、きっぱり痛打された。(中略)
「申し訳ございません」(中略)
 いっときの沈黙のあと、彼は、さながら、おのれのズボンの膝に言いかけるように
低くことばを出した。
 彼の額も両頬も肩も、痛打のあとが焼けるように熱くうずいていた。(中略)
 ものさしは机上に置かれ、頭上でかちりとライターが鳴った。
「きょう、若奥様のおしかりを受けねばならないわけがわかりました」
「・・」
 彼女の答えはなく、ふうっと白い煙が、伏せた彼の額に真正面から吹きかけられた。
「どうわかったっていうの?」
 彼女は、ルージュたばこの先端から、彼の頭上に、無遠慮に灰を落としながら、含
み笑いした。
「はい」
 答えて、彼は背筋まで赤くして、身を縮めた。(中略)
「はい、わたくしは、若奥様の」
 彼の声は、羞恥にふるえてとぎれた。
「あたくしの、何よ」(中略)
「お下ばきを盗みました」
「ばかっ」(中略)
「みっともない」
 美しい顔の中で、赤い唇がさげすみをいっぱいに現わして、生き物のようにゆがん
でいた。
「そんなまねをして、恥ずかしいとは思わないの」
「・・」
「どうなのよ、いったい」
「恥ずかしいです」
 語尾が消えるようにふるえた。
「恥ずかしいことをなぜします、性根を、今のうちに入れ替えないといけないわ」
 タバコを灰皿に押しつけながら、啓子が宣言するように言った。(中略)
「今夜は、みっちり、痛いめをみせるわよ」
 彼女は、組んでいた脚をもとへもどし、ゆっくりした動作で、左手のくすり指のリ
ングをはずし始めた。(中略)
 河原が、行儀のよい姿のまま、床で身をもだえた。
「若奥様、堪忍して」
 ふるえる息づかいが、あとに続いた。
「だめ」
 啓子の返事は、簡単な一語だった。(中略)
「ゆるして、若奥様」
「ゆるさないわ。なぐってあげる。顔を前に出して、しっかり歯をくいしばりなさい」
 ぽかりと、彼の横つらを、頬骨もくだけよと白いこぶしが痛打した。
 河原の太いのどぼとけが、がくっと上を向いた。
「どこを向いている。ばかっ」
 白いこぶしにうなりをつけて、ぽかりと、今度は反対の頬を、なぐった。
 この二度目のぽかりを、ちょうど、階段の上がり口で、{女中の}テル子が聞いた。
(中略)はじめ彼女は、耳の迷いかと思った。
 が、そうでないことは、すぐ続いて聞こえてくる同質の音で、わかった。(中略)
 その間にも鈍い殴打の音は、一定の間隔で、主人夫妻の居間の方向から聞こえてく
る。人声はなく、ただ音だけが、単調な響きを伝えていた。(中略)
 居間のドアの前にくると、殴打音は、いっそうはっきりしてきた。音と音の合い間
を、獣の音のような切迫した呼吸音が激しく、忙しく埋めているのまで、はっきり聞
きとれた。
 音がやんだ。
「なあに、このくらいのことで、はあはあしちゃって。まだまだこれからじゃないの」
 啓子の落ち着いた声が聞こえて、そのあと、ふた言み言しかる彼女の声が続いた。
 そして、また殴打音が起こった。(中略)
                                >>>>>>
 といったところで・・。(笑)
 豪華絢爛な(笑)ラインナップで、「パンチ特集」をお送りしました。映画だけ、
或いは漫画だけ(TVではじまる「ラブひな」に期待大)に絞っても、面白そうでは
ありますが・・。
 それらはまた、別の機会、と、いたします。

>>見てみたい、或いは、読んでみたい人へ
 「フェア・ゲーム」は、ビデオレンタル屋で。何処でもあるでしょう。
 「PERIDOT」も、人気作品です。何処の本屋でも見つかるでしょう。
 「ニューフェィス」は、図書館で・・。
 それ以外の作品は、何時も通り、「風俗資料館」を、お勧めします。
 「MX今昔その三」で、ご紹介した「風俗資料館」のHPのアドレスは変わって
いました。現在は・・
         http://www.ask.ne.jp/%7Eabnormal/j/menu.htm
                                                      です。                  
>>UU短信
 この「男を殴る女」ってのは、私の一番好きなテーマです。もうちょっと暇があれ
ば、自分でこのテーマだけで、HPを立ち上げたい、という希望もあるのですが・・。
 貧乏ひまなしで・・。(涙)

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