MIX FIGHT今昔物語
Text by UU
その3「サファイヤVSメロン(薔薇と蜜蜂から)」

さて、今回は、かなりマニアックなところからの、ご紹介です。
 ちょっと簡単に手に入るモノではありませんが、不可能ではありませんし、何よ
り、格闘Mモノとしては、どうしても押さえておきたい名作中の名作ですので、あ
えてご紹介します。
 私は、日本語による格闘Mモノの小説としては、この「薔薇と蜜蜂」をトップに
挙げます。まったくの素人の作品、のようですが、それだけになおさら「来る」も
のがあります。
 
 漫談千夜一夜物語、と、銘打たれたこの「薔薇と蜜蜂〜田代俊夫」は、昭和41
年12月号から昭和44年にかけて、「奇譚クラブ」に連載されました。
 千夜一夜物語、というだけに、場所は、アラビアの国、私が「その1」でご案内
したミリアム姫の物語が、最初のベースになっています。「強くて美しい女(サフ
ァイヤ姫)と華奢で頼りない美少年(メロン)の物語」です。
 設定によると、メロンは花のように美しい15歳の美少年です。その年に親を亡
くし天涯孤独の身寄りになりますが、富裕な家で何不自由なく育っていたメロンは、
放蕩な日々を送り、あっと云う間に財産を食いつぶしてしまいます。最後の遺産で
航海に出たメロンでしたが、嵐に遭い、一人、カルピスという国に流れ着きます。
そこで、親切な老人の下働きをしていて、市場に買い物に出かけた際、一人の美し
い奴隷女を見かけます。年の頃は、23、4歳。気品のある美貌とすらりとした長
身、美しい金髪、ふっくらと盛り上がった豊かな胸、見るモノを圧倒せずにはいま
せんでした。
 この、競売で売りに出されていたはずの女奴隷は、見物に来ていたメロンを、逆
に見そめ、強引に誘惑して、懐の全財産を吐き出させて、無理矢理自分を買わせる
のでした。
実は、この娘サファイヤは、サントリーという国の姫で、あらゆる学問の道を究
め、武芸百般に通じ、剣技槍術馬術、どれをとっても、どんな勇士より秀でたスー
パーウーマンだったのです。そして彼女は、15歳で亡くなった美少年の弟を、誰
よりも愛しており、その面影を追っていました。
 求婚者達に、片っ端から決闘を挑み、それを負かし続けていた姫に、業を煮やし
た父王は、娘に強引に縁談を押し付けます。サファイヤ姫は、国を捨て、女奴隷に
身をやつして、各地を彷徨いながら、弟に似た美少年を捜していたのでした。
 
 で、ここから、美しく強いサファイヤ姫と、顔しか取り柄のないメロンとのうら
やましくも(笑)楽しい夫婦生活が始まります。
 サファイヤとメロンの間での、明白な格闘シーンはありません。歯向かっても、
あっと云う間に抑え付けられてしまいます。
 メロンは、光り輝くような美貌と見事な肉体美の姐さん女房に圧倒され、手も足
も出ません。生意気を言っては叱られ、反抗してはお仕置きされ、浮気をしては折
檻をされ、という豪華絢爛な毎日を送ります。
 初夜からして、裸にされ、後手に縛りあげられ、姫の膝元に抱え上がられた上、
口移しにお酒を飲まされて、ダウンします。
 門限破りには、兵糧責め、柱に縛りあげられて正味40時間のお仕置き。絶対優
位の力関係を背景に、サファイヤは、時に厳しくメロンを責め立てます。
 そして少しずつ、学問なども教えて行きます。勿論これも、時には平手打ちが飛
んでくるスパルタ方式です・・。
 ある日メロンは、苦手の幾何の試験から逃げ出したいこともあって、不埒な誘惑
に乗って他人の屋敷を訪れ、そこで4人の美女相手に浮気をしてしまった上、サフ
ァイヤを売る、という契約書に無理矢理サインさせられてしまいます。
 しかし、サファイヤはやってきた三人の男達を次々と撃退し、半殺しの目に合わ
せ、証文を取り返します。
 そして帰ってきたメロンには、それはそれは惨い折檻が待っていました・・。
 
 半日間裸で井戸の中に吊り下げられた後、いよいよミッチリとお仕置きです。先
ずは右手での尻打ち、そして次は左手・・。メロンのお尻が、マントヒヒのように
赤くただれて腫れ上がるまで打った後、今度は、つねり技の敢行です。内腿の痛覚
を狙って、正確に満遍なくつねり上げます。それが終わると今度は、ベッドに仰向
けに縛りあげておいて、お灸です。鼠蹊部に二カ所設置されたお灸の熱さにメロン
は、断末魔の悲鳴を上げます。
 お仕置きは、これにてようやく終わり、サファイヤは、メロンの縛めを解いてや
り、ベッドに寝かしつけてやりますが、すぐメロンの胸の上に座り込みます。
 
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 お仕置きは終わってもまだ付録がある。ただでさえ参っているのに、盤石の重み
を加えられたメロンは息をするのも苦しいくらいです。両腕を両膝の下に踏みしき
豊臀をどっしりと胸の上に据えて、お得意のポーズで組み敷いたサファイヤは、お
灸の間中ごぶさたしていたメロンの顔を満足そうに眺めやりました。散々痛めつけ
られ精根尽き果てたメロンは、目を閉じ顔をそむけてしゃくり上げています。
 あごに手をかけ真上を向かせ、おめめを開かせてからじっと覗き込む。涙にくも
る眼で慈母の温顔を拝謁したメロンは、今までの暖かい思いやりを追憶して、また
しくしくと泣き始めるのでした。
「よくそんなに泣けるわね。あなたは。どこから涙を補給してくるの?」
 そう言ってハンカチで玉の露を拭きとりながら、サファイヤは豊臀をゆっくりず
らしました。(中略)サファイヤはきわめて気分良好です。生きものを尻の下に隷
属させて君臨するのは正に壮快そのもの。こたえられません。
−愉快、愉快。どうせ今夜は使いものにならないんだから、このまま朝まで押さえ
込んでいてやろう。口実なんかいくらでも作れるんだ・・。(中略)
「さて背の君、お仕置きも終わったから幾何の試験を始めることにしましょうね」
 執念深く覚えているのです。重圧に呻吟するメロンはまた半泣きの表情に変わり
ました。(中略)
 サファイヤはそのままの体勢を維持して、口頭試問を開始します。難しい問題ば
かり出す。(中略)念入りのお仕置きで身体は綿のようにくたくたです。もちろん、
できっこなどない。(中略)かといって、誤答を出すと、かみなりが落ちる。その
度に鼻白んで泣きべそをかくメロンです。
「さっきから一問もできないじゃないの。あなたは。こんな易しい問題どうして分
からないのよ!・・とにかく解けるまではやらせますからね。さ、もう一度考えて
ごらん」
「お願いです、明日に、明日にしてください」
「今夜だって同じこと!」
「・・でも疲れてるし、・・それに、とても重くて苦しいし、・・考えようとして
も、まとまらない・・」(中略)
「重いですって?まあ何て失礼な!一体私のどこが重いのよ、どこが・・」(中略)
「あ、・・な、なにもそんな、そんな意味で言ったんじゃなくて・・」
 ぴしゃりと一発、横面が張られました。
「ふん、デブで悪かったわね。・・折角だからどこがどんな風に重いのかジックリ
鑑賞してもらいましょうよ・・」
                               >>>>>>
 
 また、お仕置きです。身体の上で、横揺れ縦揺れ、思い切り体重をかけられたメ
ロンは、悲鳴をあげ、息も絶え絶えの目に合わされます。充分にメロンを痛めつけ
たサファイヤは、上機嫌で、更に試験を続行するのでした・・。
 
 2年ほどの月日が、順調に(?)流れた後、二人は、メロンの故郷に向けて、旅
立ちます。しかし旅の途中、メロンは、「紅さそり」という名の盗賊団の美しい女
首領に拐かされてしまいます。
 今度は、盗賊団+紅さそりVSサファイヤの対決です。サファイヤは、盗賊団の
男どもを片っ端から斬り捨ててしまうと、紅サソリとの一騎打ちに入ります。女斗
美の好きな方には、堪えられない一戦ですが、省略します。とにかくサファイヤが
勝ち、紅サソリを鞭で散々に打ち据えます。
 ところが、盗賊団の残党にさらわれ、逃げ出したメロンと、サファイヤは、また
も散り散りになってしまいます。
 メロンを捜すため、たまたま男装をしていたサファイヤは、ある国の国王採用試
験に合格し、国王として国を治めることになりました。そしてメロンとも劇的な再
会をするのです。
 しかし男装のサファイヤを自分と気付かないメロンを、ちょっぴり懲らしめるた
め、サファイヤは、メロンを国王の慰み者として、召し入れます。そして女装させ
た上、踊りを踊らせたり、馬にしたり、散々からかった後、正体を暴露します。怒
ったメロンですが、サファイヤには敵いません。更に、サファイヤに子供が出来た
こと、そして、妃として、この国で暮らすようにと言われて、驚愕します。そう簡
単に女房の思惑に乗ってたまるものかと、反抗するメロンは、サファイヤに、再び
こっぴどくお仕置きされます。
 
>>>>>>
「子供、子供って、だれの子供なんだい」
「それ、どういう意味?」
「ヨソの男とデートしたんだろう。お前。その子供をボクのにしょうたって、絶対
に認知なんか・・」
「ンまあ、何ですって!」
 サファイヤの顔色が急変しました。言っていいことと悪いことがある。(中略)
「もう一度、言ってごらん、今のこと!」
 秀麗な美貌がゆがみ、柳眉を逆立て、まなじりを決して詰問する。(中略)
「何回でも言ってやるとも。お前はボクに内緒でカンツして・・」
 ピシャリ!メロンの頬に痛烈な平手打ちが見舞いました。(中略)
 恐ろしい表情で、睨みつけるサファイヤ。(中略)
 やがてサファイヤが平静を回復しました。怒りの色は朝もやのごとく消え失せ、
その気品のある美貌に典雅な優しい微笑が浮かんでいます。だがこれを、再度の平
和攻勢の前兆と混同してはならない。物静かな口調で、
「たいていのことは許してあげるけど、その邪推はあんまりよ。二度とそんな口が
きけないように、お仕置きしてあげますからね」
 やはり、そういうことでありました・・。(中略)
「これはおまるだけど、こっちの方は何だかご存知?」(中略)
 サファイヤはにっこりとメロンに笑いかけて
「あなた、お腹に変なものが溜ってきたらしいわね。だからとんでもないことをい
いだすのよ。一度お掃除しましょ。これね、浣腸用のお道具なの。うれしいでしょ」
「何、何だと!」
「カンチョウですよ、お浣腸。わかった?」
 メロンは悲痛な叫び声を発しました。
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 そして、逃げ回るメロンを縛り上げると、裸にひんむきます。攻撃開始。
 
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 メロンは苦悶に、あえぎ続けます。サファイヤは、いきなりその身体に手をかけ、
よいしょと、あおむけに引っくり返す。(中略)
 すかさず、両足首を掴んで、強引な股裂き技の敢行。
「ああっ、そ、そんな!い、いやだあ!」
 力まかせの荒技に、非力なメロンがこらえ切れるわけがありません。力関係の差
はまことに明確です。
「ふふ、口惜しい?」
「ああ、畜、畜生!」
「このまま、最後まで見とどけてあげますからね」(中略)
死物狂いに暴れ出しましたが、左右に開かせられた両脚を鉄のような両脇の小わき
にかっちりと押えこまれ、どうすることもできません。狂乱状態のメロンを、サフ
ァイヤは小気味よさそうに口元に微笑を浮かべて見下ろしているのです。(中略)
「鬼!悪魔!痴漢!変態性!」
「そんな失礼なことおっしゃると、あとで後悔なさいますよ・・」
 サファイヤは、くすくす笑っています。(中略)
 固く瞼を閉じたメロンの眼から、屈辱の涙が数滴こぼれ落ちました。(中略)
「ああ!も、もう堪忍。もう許して」(中略)
「ぼ、ぼくが悪かったよう・・」(中略)
「そんな謝り方、あると思う?」
「ぼくが、悪う、悪うございました」
「だめ、だめ!謝るのに一体どこを見て言ってるの!」(中略)
「もし、わたしが姦通していたら、謝る必要などないじゃない?」(中略)
「ぼ、ぼく信じてます。ぜったいに信頼してるんですう・・」
「じゃ、さっきの失言は?」
「取、取消します」
「痴漢とか変態とか言ったことは?」
「も、もう口が裂けても、二度とは、申、申しません」
「本当に心の底から反省してますね?」
「は、はいっー」(中略)
 サファイヤは紅唇にうっすらと会心の笑みを浮かべると、(中略)
「じゃ、もう一度謝りなさい。どういう点が悪かったのか。何を反省しているのか
を正確に言って。・・いいわね?はじめからおしまいまで、わたしの顔をはっきり
見てしゃべるのよ。謝り方が気に入らないと、何回でもやり直させますからね」
(中略)メロンは改悛の涙を流して、
「もう、もう決して、生意気な口は、ききません(中略)ぼくが、悪う、悪う、ご、
ございましたっ、ど、どうか、お、お許し下さい」
 メロンの完敗、完全な屈服です。サファイヤは、さも満足気にうなずくと、メロ
ンの顔を見て、にっこり笑いました。そして表情も晴れ晴れと、
「では、わたしのお妃になることも承知して下さるわね?」(中略)
「な、なります。なりますから、ああ!」
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 そんなわけで・・(笑)。二人は、男装の国王と女装の妃として王国を治めます。
そして、幸福に暮らしましたとさ。
 
 田代俊夫は、この時期の奇譚クラブに、この作品のほか、「蚯蚓のたわごと」、
「続 蚯蚓のたわごと」、などを書いていますが、「征服劇」というエッセイを最
後に姿を見せなくなってしまいます。
 推測するところ、大学か、あるいは大学院の学生ではないか、と思われる文体で
すので、多分就職が決まって、多忙のため、筆を折ってしまわれたのではないかと
思いますが・・、実に残念至極です。
 このまま埋もれさすのは、あまりにも勿体ない格闘M小説の名作ですので、あえ
てご紹介しました。
 
 さて、「奇譚クラブ」の入手方法ですが、最近は、あまり古本屋でも見かけませ
ん。色々捜されるのも良いかも知れません(私は、苦労して集めましたが・・)が、
関東近辺の方なら、簡単に見に行ける処を、ご紹介します。
 JR飯田橋から徒歩5分ほどのところに、「風俗資料館」という処があります。
と、言っても、マンションの一室を使ってあるだけ、ですけれど・・。
 昔の奇譚クラブは元より、風俗奇譚、裏窓等、SMに関するものなら、ほとんど
揃っています。

 ただし、会員にならないと見ることはできません。最近、会費はちと値上がりし
たようですが・・。
 詳しくは、HPがありますので、そちらで、ご確認下さい。HPのアドレスは

http://www.ask.or.jp/~abnormal/j/menu.htmです。
 そちらで、お問い合わせ下さい。
 
 奇譚クラブや、風俗奇譚に関しては、今後も、万田不仁、諸岡堅雄、夏木青嵐等
で、それぞれ別に一章を充てるつもりでいますので、ご期待ください。
 
 その3は、「薔薇と蜜蜂」からのご紹介でした。(文中敬称略)

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