MIX FIGHT今昔物語
Text by UU
その2「ブリュンヒルトVSグンテル(ニーベルンゲンの歌から)」

 「MIX FIGHT 今昔物語」の二回目は、これまたお古いところで、「ニ
ーベルンゲンの歌」からのご紹介です。
 これは、私は図書館で発見し、コピーしたのですが、その元本をなくしてしまっ
ています。ま、ちょっと大きい図書館なら、何処にでもあるはずですが、最近、私
もとんとご無沙汰なので・・。
 そんなわけで、申し訳ありませんが、今回はメモと記憶に頼っての紹介です。多
分、相当に記憶違いがあるとは思いますが、いずれまた、図書館を訪れる機会があ
りましたら、必ず補正しますので、どうぞお許しを・・。
 ま、ニーベルンゲンの歌そのものが、史詩(13世紀の初め頃、オーストリアの
吟遊詩人が創作したと言われています。ちなみに、第一回目でご紹介したアラビア
ンナイトの「オマール王とその二人の王子の話」は、大体11世紀から13世紀に
かけて書かれたモノだとされています)ですので、読んでも、それほどM価(?)
の高いものではありません。
 
 でもこれだけは、なかなか格闘Mモノにとっては、聞き逃せない良い話なのです。
 ストーリーは、ブルグント国の王、グンテルが、イースランドの女王ブリュンヒ
ルトを妻にしようとしたことが始まりです。ブリュンヒルトは、評判の美女ではあ
りましたが、勇壮で、さらに男嫌いで知られていました。彼女は、言い寄ってきた
求婚者と、必ず石投げ等の荒っぽい方法で力比べをして、負けた男を殺してしまう、
という残虐性も持ち合わせていました。
 ブリュンヒルトは、美しさと強さの他に残虐性をも兼ね備えたドミナです。この
辺が、アブリザー姫とは少し違います。実を言いますと、私の好みではないのです
が、こういう女性が好き、という方も、いらっしゃることでしょうし、何と言って
も、古典中の古典ですから、あえて、二回目に持ってきました。それにしても、ア
ラビアンナイトにもこうした男嫌いゆえ、求婚者と決闘してやっつけてしまう、っ
ていう設定が出てくるところを見ると、当時(というか、その昔は)、本当にそう
いう勇ましい女性がいたのでしょうね。
 さて、目の前でブリュンヒルトの怪力を見て、グンテルは、震え上がってしまい
ます。ここで、勇者ジークフリート(有名な英雄ですね)の登場です。彼は身にま
とうと姿が消える魔法のマントを持っていました。彼は、これを使って、グンテル
の代わりに石を飛ばし、見事に猛女ブリュンヒルトを打ち破ります。
 ブリュンヒルトは、渋々グンテルとの結婚を承諾しますが、初夜の晩、彼との性
交渉を拒みます。「ならば力づくで・・」と、愚かにも襲いかかった新郎を、美し
く強い新婦は、組み敷き、グルグル巻きに縛り上げます。更に、手と足を一緒に縛
ると、壁に吊し上げてしまいます。
 そしてブリュンヒルトは、快適な朝を迎え、一晩中吊し上げられたままの、グン
テル王を嘲弄します。グンテルは、哀れにも、美しい新婦に許しを乞わねばなりま
せんでした。
 このあたりのくだりを、手元のメモから、ご紹介します。ただ、今となっては、
どこまでが元本で、何処からが創作かわからなくなっています。(汗)
 そこのところを、承知の上で、お読み下さい。
 
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  王は、艶なる妃の身体を、愛することが出来ると思っていた。しかし、彼女が
 彼の妻となるのは、まだほど遠いことであった。彼女は、麻のように真っ白な肌
 着を着けて臥床に入った。そこで、彼は考えた。「これで、自分が一生涯のぞん
 できた願いがすべて叶えられる」と。そして王は、妃の臥しているところへゆき、
 彼女のそばに身を横たえた。彼のよろこびは大きかった。王は、美しい姫を両腕
 でかき抱いた。ところが、彼女は言った。「王様、そんなことはお止しなさいま
 せ。お望みのことは叶いません。当分の間は処女(おとめ)のままでいるつもり
 です」王は、彼女の愛を戦いとるために、彼女の着衣を掻き乱した。すると凛々
 しい乙女は、腰にまとっていた頑丈な打紐の帯を解いて、手に取った。かくて彼
 女は、王に対して手ひどい苦痛をあたえたのである。彼女は、王の手も足も、と
 もに縛りあげ、彼を一本の釘にかけて、壁に吊したのであった。そして王は、二
 度と手を出さぬことを条件に、ようやく許されたのであった。いろいろ考えた挙
 句、グンテルは翌日、強行手段を取ることにしたのである。グンテル王と美しい
 姫との間に争いが始まった。グンテルは、ブリュンヒルト姫のそばに身を横たえ
 たのである。すると彼女が言った。「グンテル様、どんなに好ましくなっても、
 それはお止しなさいまし、昨夜のようにひどい目にあいますから」やがて言葉通
 り、彼女はグンテルに痛い思いをさせた。グンテルは愛しい姫をかき抱いた。す
 ると姫はいきなり彼を臥床から床へ投げつけた。しかし王は、すぐにとび起きて、
 さらに格闘は続いた。そこで彼女を取り拉ごうとして、彼はまた痛い目にあわさ
 れた。彼がなおも思い留まらないので、姫は言った。「失礼なことをなさるから、
 痛い目にあうんです。ひとつ思い知らせてあげましょう」彼女は、その腕で彼を
 抱え込んだ。彼が姫の衣服をかき乱したことに対し、美しい妃は、手きびしく罰
 したのであった。彼の強剛も、男の意地もなんの役に立ったであろう。彼女は、
 王に対し、自身の膂力の優越を示し、彼を力まかせに運んでいって壁まで連れて
 いった。しかし、勇士グンテルも、最後の力を振り絞り、王妃ブリュンヒルトに
 対して、やぶれかぶれの勝負をこころみた。姫が勇士の顔を激しく殴りつけたの
 で、グンテルの顔から血がにじんだ。彼は、麗しい姫に勝つことはできなかった。
 そして美しい姫は、王の頑強な意志を取り消させることができた。王は、愛しい
 姫によって、何度も床に強く投げつけられたので、痛みのあまり叫び声をたてね
 ばならなかった。姫の大力が彼にいとどしい苦痛をあたえたのである。王は、帯
 でもって彼女を縛ろうとした。けれども、これを振り払った彼女の手の力に、彼
 の四肢五体は砕けんばかりであった。これでたたかいは止み、グンテルは昨夜に
 続いて、手も足も縛りあげられ、壁に吊されたのであった。そこで主君のつもり
 でいた人が、必死で許しを乞うたが、彼女はぐっすりと寝込んでしまって、王の
 ことなど頓着しなかった。それで王は、ひと晩中吊されたままであった。「さて、
 いかがでしょう、グンテル様」と美しい姫が笑みを浮かべて聞いた。「女の手で
 縛りあげられているのを、家来などから見られるのは、具合の悪いことではない
 でしょうか」
                               >>>>>>
 
 二日目は、ほとんど創作ですね・・。
 
 この後、ジークフリートが再び登場し、彼の力を借りてグンテルは思いを遂げま
す。処女を失ったブリュンヒルトは、急に貞節で大人しい女になってしまって、も
う・・、読む価値がなくなります・・。(格闘Mモノにとっては・・)
 
 ともあれ、初夜、美しい新婦に手と足を縛り上げられ、壁に吊される新郎。その
設定は充分に抜けます。(笑)
 ジークフリートが、既に国に帰ってしまっていたため、誰に頼るすべもなく、毎
晩毎晩性懲りもなく挑んでは、壁に吊される哀れなグンテル・・。なんてのは、ど
うでしょう?終いには、怒り心頭に達したブリュンヒルトから、それはそれは残酷
で無慈悲な鞭打ち刑を受ける、なんてね・・。美しく勇壮なブリュンヒルト女王の、
名ばかりの夫として、その一生を全うするグンテル・・。そういうのも、なんか良
いですよね。(笑)
 
 その2は、「ニーベルンゲンの歌」からのご紹介でした。

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