「女子と本気勝負!」
Text by 薮平
バスケットボール

家から車で20分くらいの公園の一角に、3オン3(半面のコートで3人対3人
によるバスケット)のコートがあります。今ではそんなにやっている人はいない
ようですが、何年か前、3オン3が流行っていたころには、思い思いの格好を
した若者たちが集まってきて試合していました。私は通りがかった際に何の気
なしに見ていたのですが、その中で、男子チームにまじって、たまに女子チーム
も参加しているのを見つけました。

女子チームは、3人とも女子高生かなという感じでした。男子にまじって
遊ぼうというくらいですから、3人とも、部活経験者、もしくは現役で
やっているのでしょう。スピードのある動き、シュート力とも男子チームに
ひけをとらないように見えました。身長も、女子にしては大きく、2人は
170cm以上はあるように見え、もう一人も160以上に見えました。
常連の男子チーム、高校生もしくは大学生と思いますが、と対戦がはじまり
ました。男子対女子といっても、女子チームは上背があり、動きも良いので
ハンデがあるようには見えません。しかし、男子の常連もさすがに皆経験者の
ようで、男子が勝ちました。しかし、女子チームもかなり点数を入れ、男子も
勝つためにかなり真剣にやっている感じがしました。
その日は、いくつかの男子チームと対戦していましたが、惜しい試合もあるも
のの、残念ながら、女子チームの勝利を見ることはできませんでした。

しかし、この公園にはいろんなチームが集まってきているので、もしかして
この女子チームが男子を負かす様を見れるかもしれない、と考えました。
そう思った私は、暇な土日には、3オン3のコートの近くのベンチに陣取って
待ったりしました。登場を待つ間というのは結構疲れるものでした。なんせ、
男子対男子の試合を見ても面白くないですから。そんな訳で、その女子チーム
がやっているのを見つけると心躍りました。

ある日曜日にも、その女子チームが来ているのを見つけ、男子に混じっての
ダイナミックなプレーをうっとりと見ていました。その日の女子チームは、
おそろいの黄色のTシャツに下は黒のスパッツ、もしくは短パンという格好で
した。常連男子チームと何試合か熱戦を繰り広げた後、ついに、餌食となる男子
チームが現れました。その男子チームは高校生と思われ、はじめて見る顔でした。
皆身長も高くなく、NBAのユニフォームを着てきめているところを見ても、
どう見ても実力よりファッション先行というふうに見えました。
[こいつらなら女子チームに負かされてしまうのでは。]

試合前に両チームで何か話しているようでした。男子チームはいきなりの対戦
が女子チーム相手でとまどっているようでしたが、すぐにいいところを見せ
ようと張り切っているように見えました。

試合がはじまりました。3オン3は攻撃、守備を交互に繰り返します。
まずは男子の攻撃。3人の間でパスを2、3本回したところで、あっけなく
女子にカットされてしまいました。男子は信じられないという顔をしていました。
女子の攻撃。ポンポンと早いパスを回した後、男子の隙をついてドリブルで
カットイン。軽々とレイアップシュートが決まりました。女子は歓声を上げます。
男子は顔が引きつっていくようでした。
再び男子の攻撃に移ります。が、女子チームはどうやらディフェンスも相当うま
く、男子チームはシュートチャンスさえつかめません。シュートしようとしても、
上背のある女子に上から押さえ込まれてしまいました。男子は情けない顔になって
いきます。もはやここへきた事を後悔していたかもしれません。
一方、女子の攻撃は、男子チームの弱さを既に見切ったように、好きなように
パスを回していきます。しかも男子の低いディフェンスをあざ笑うかのように、
その上を越してシュートを決めたりします。早いパス回しについていけず、ディ
フェンスが甘くなったところで、外から華麗な3ポイントシュートが決まったり
しました。

それでも、試合が始まって数分間は男子チームにも意地があったのでしょう。
ムキになって力ずくで女子の体をおさえにかかったりしました。もちろん、
これは反則で、ただただ、女子のフリースローの得点を増やすだけでした。
しだいにそのカラ元気も続かなくなり、試合が終わる頃には、男子は完全にやる気
をなくし、ただただ振り回され、女子の華麗な攻撃を受け続けていました。女子は
男子を打ち負かすのを楽しんでいるようでした。一方、男子の顔は血の気が引き、
泣きそうになっているように見えました。

女子チームはもう何試合かをこなしていたので、かなり汗をかいており、Tシャツ
は汗でブラジャーの線が浮き出ていました。バスケットは密着度の高いスポーツで
あり、そんなセクシーなTシャツの胸を押し付けられ、もしくは下半身がからみ
あいながら、女子に押さえ込まれ、手も足も出ず敗北していく男子の様は、特に
被虐感あふれるものでした。

わずか10分程の試合で、スコアは25−2と大差がつきました。女子に赤子の
手をひねるように大差で負かされてしまった男子チームは、試合が終わると逃げる
ように公園を去っていきました。たぶんこの公園には二度と来れなかったんじゃ
ないですかね。

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