「女子と本気勝負!」
Text by 薮平
「バレーボール」

中学時代、体育の時間のお話です。
 
中学3年の時のクラスは、担任が女子バレー部顧問ということもあってか、
クラス20人の女子にバレー部が4〜5名いました。同じ班で、自分が
いつも仲良冗談をいってたコも、バレー部でした。よく、こんど部活の
大会があるといった類の話をしてたような気がします。

中学の体育は、2クラスづつ、男子と女子は別々に行います。今から
思えばとても多感な頃ですから、グランドや体育館に別々になりながらも、
遠巻きに見る彼女達の眩しいブルマー姿に胸をときめかせていた覚えがあります。
 
ある日、男子の体育の担当の先生が休んだので、
急遽、男女合同で、バレーボールの授業となりました。
もちろん、最初は男子対男子、女子対女子での試合でした。
まあ、合同とはいえ、先生がまとめて面倒を見るだけの事かな、と思ってました。
 
体育とはいえ、3年生の授業では、6人制で、割とちゃんとしたルールで
行います。私のチームには、我がクラスで唯一の男子バレー部員がいて、
私も、(中学時代のクラブはバドミントンでしたが)そこそこ、体育では
活躍する方だったので彼と二人が中心のチームでした。バレー部員がいる
だけで大分違って、男子対男子の中では負けなしでした。隣のコートで
やっている女子達に自分のいいところを見せようと、はりきっていたと思います。
 
授業が後半になって、先生が、せっかくだから男子対女子で対戦して
みるかと言い出しました。その頃までに強い女性に憧れる自分に気がつい
てはいましたが、この時は自分のかっこいい所を女子にアピールしたい、
女子にモテたい、という気持ちが勝っていました。これまでいろんな種目
の「試合」「対戦」で女子に負けたことはなかったので、その時点では、
まさか女子に負けるはずはない、と思っていました。いかに自分の強さ、
カッコ良さを見せつけようかと...
 
我がチームは、男子で1位だったので、女子の1位との対戦でした。 
相手チームには、バレー部が2人いました。一人は同じ班の仲の良いコでした。
彼女も、相手チームに私がいることを見つけると、
「御手柔らかにね」と笑顔を見せました。[よーし。いいとこ見せてやる]
鼻息もあらく、張り切っている自分とは対照的に、男子バレー部の彼は
心なしか元気なく見えました。
 
試合が始まりました。 試合は一方的でした。
女子バレー部2人のレベルは、
僕ら男子のチームと比較するとまるで、大人と子供でした。
まずサーブが速く、変化までするのでとれません。
運良くとれて、こちらのスパイクまでもっていっても、
軽くブロックされてしまいます。
もちろん、体育のチームですから、運動の得意でない女子も入っていて、
すぐに、男のプライドみたいなものは吹き飛んで、何とかそっちを狙おう
とするのですが、バレー部二人が巧みにカバーしてすぐに、
強烈なスパイクを打ち込まれてしまいます。
また、試合が進むうちに、日ごろ運動ができないと思っていた女子までが、
結構バレーはうまい事がわかりました。
そんなコにまで、スパイクを打ち込まれたりしました。
 
私のスパイクが、女子に軽くブロックされてしまう。
逆に彼女達のスパイクには、私がブロックに飛んでも軽く打ちぬかれてしまう。
同じ班のコは身長162、3でしょうか。
なぜ、身長170の私がネットをはさんで負かされてしまうのか、
頭がパニックでした。
ネット上の押し合いで負けて、押し込まれ、私はひっくりかえりました。
私は泣きそうな顔で立ち上がる時、ネットごしに、彼女のきれいな足、
きれいなブルマー、きれいな胸、そして勝ち誇った笑顔を見せられました。
彼女は「へっへー」といって、得意げに挑発しますが、
こう実力差がありすぎると返す言葉もありません。
 
もっと悲壮だったのは、バレー部の彼でした。
同じバレー部でありながら、
男子対女子でありながら、
女子に歯が立たない。
彼は真っ赤な顔で、女子にスパイクを打っていきましたが、
焦れば焦るほど、アウトしたり、ブロックで返されました。
 
私は、最初だけは、「なかなかやるねえ」なんて、女子に話しかけて
ましたが、すぐに無口になり、男子どうしで、ミスをののしり合うように
なりました。そして、最後にはその元気もなくなり、
「ああ女子に負けちゃうよ」なんて、泣きそうな声で口にするだけでした。
男子どうしの情けなく焦燥感のある顔が相乗効果となって、
チームで、集団で、女子に負かされていく、犯されていくという、いまだ
経験した事のない被虐感でした。
男がよってたかって、女子にかなわない...
 
これに対し、女子は1点決まるたびに輪になって、黄色い声で歓声を
あげます。みんなが男を負かす快感、精神的に犯す快感を満喫している
ようでした。同じ班のコも、ポイントが決まる度に、笑顔の眼差し、
明るい歓声、きれいなブルマー姿で、私を犯し続けました。
3−0、
5−0、
8−1、
12−2、
15−2、
というような一方的な展開で、試合は終わりました。
2点しかとれませんでした。それも後半、
女子が遊びだして、素人のコにスパイクを回しだしてからのやっとの点でした。
終始、女子に圧倒されました。
体から力がぬけ、泣きそうでした。
ただただ、その場から逃げ出したい気持ちでした。
 
時間が余ったので、第2セットをやる事になりました。私たちはとても
次をやれる精神状態ではなく、勝ち目が無いばかりか、もはや女子に
犯される地獄絵を続けるだけと、わかりきってました。しかし、逃げる
に逃げられない状況であり、続けることになりました。
 
もはや、気力もなく、ただただ、女子のスパイクを打ち込まれるだけ
でした。女子も完全に男子の息の根を止めにきたようで、
戦意喪失の男子のコートに、笑顔で、容赦なく打ち込んできました。
女子の歓喜の声だけが、体育館にこだまします。
7−0になったところで、さすがに見かねたのか先生が、
「もうそれくらいにするか」と試合を止めました。
われわれ男子は、
女子にサンドバッグのようにメッタ打ちにされたあげく、
レフリーストップになった訳です。
私は究極の精神状態に追いつめられ、もう少しで鼻血が出そうな感じでした。
 
この夜、私はこの追いつめられた状況の夢を見て、
夢精してしまいました。
私のその後の「対戦マゾ」人生への、決定的出来事でした。
 
この後、班の中での彼女との関係が決定的に変わりました。何かにつけ
「男子より女子の方が強いよね」という話にすり替えられ、その度に私の
脳裏に地獄絵が蘇り、かつ精神的に虐げられながらも興奮するように
なりました。彼女は私を弄んで楽しんでいるようでした。
 
そしてその後、実は、
女子バレー部が、男子バレー部よりも強いという
事実を聞き興奮しました。
練習試合では、いつも、女子が勝ってしまう
という事実を...
部のレベルでそうなのですから、体育でかなわない訳です。
女子と対戦する時に、男子バレー部の彼が元気がなかったのは、最初から
かなわない事を知ってたからという訳です。
 
私は時間があいている時、他に用事があるフリをして、バレー部の練習を
見ていました。バレー部女子の動きは、体育の時より数段強く、速く見えました。
[体育の時はまだ手を抜いていたのか]
[手を抜いた女子にボロ負けしたのか]
同じ班のコは、私を見つけると、私に手をふり、そして、はつらつと強力な
スパイクを打ちました。
[どう、私のスパイクはあんなもんじゃないのよ]
[私が本気を出したら、もっと惨めな目にあってたのよ]

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