Text by ATTU
Part 3
「・・・えぇ、ちょっと身体がだるくて・・・はい、医者に・・・はい、すいません。
申し訳ありませんが・・・はい、ありがとうございます。失礼します。」
携帯のフリップを閉じて電話を切ると、浩次は軽くため息をついた。とりあえず、今日
は休む事にしたが、明日会社に行けるか自信は無かった。とにかく、電車に乗るのが恐
くなっていた。あの女の事もあったが、昨日の事が大きな引き金となっていた。ただ、
女性と身体が触れただけでも、パニックを起こしそうだった。
「とにかく、落ち着かなきゃ」
そう呟いて、とりあえず頭の中を整理して見る事にした。
『えっと、昨日は帰ってきて・・・しばらく泣いてたのか・・・でも、いい加減泣いた
ら気持ちが落ち着いたんだ・・・。』
涙にはストレスを拡散する物質が含まれているという学説を聞いた事があった気がする
けど、本当にそうだな。思い切り泣いた事で、とりあえず気持ちに一つ区切りが付いた
気がする。その後、シャワーを浴びて、気分を少しはすっきりさせた。それでも、痛む
ペニスを洗う時は、まだ涙が込み上げてきたのだった。女は、あの後、ペニスの紐を解
いた。その時、彼のペニスから射精のようにいきおい良くではなく、まるで傷口からこ
ぼれ出る膿みのように、ドロッと白い液が大量に溢れ出た。それが彼のペニスからボー
ルにかけて、ゆっくり滴り落ちて行くのを感じていた・・・。
シャワーから出ると、何をする気にもなれず、ベッドに転がり込んで何もかも忘れるよ
うに眠ったのだ。
そんな事をぼんやり考えてながら、ベッドの脇に転がった昨日何故か持ち帰って来てし
まったものを見つめていた。脚を固定していた拘束具、目隠しに使われたサテン地の布、
猿轡に使われた幅広のスカーフのようなもの、そして口に押し込まれていたパンティ。
そう言えば、何か味がしたな、しょっぱいような・・・。直前に脱いだものを彼の口に
押し込んだのか・・・?もう、吐き気もしないな・・・。
そう考えながら、ふと疑問を抱いた。あれは、計画的なものだったのか?彼を狙ってい
たのだろうか、それとも偶然?考えていると、次第に気になりだした。そういえば、草
むらに連れ込まれた時、押し倒されたとこには、シートかなんか敷いてあったし。脚を
縛られた拘束具も事前に木に固定されてたようだった。やり口も悔しいけど手慣れてて、
手際良かったな。彼にまったく、声を上げさせなかったのだから。行為の最中も、声を
上げずに快感に浸る余裕があったみたいだ。ただ、ある程度、計画的なものだったとし
ても、それが彼を狙ったものかは、判断のしようがなかった。
痴女の事といい、今回の暴行女といい、なんでこうも続けざまに起きるんだ?俺が何し
たっていうんだ、そう思わず泣きが入るのも無理無い事だった。女でも、こうはまとめ
て、いろいろありはしないだろう、まして、浩次は男である。普通は、どれかひとつだ
って身に起きる事がないような事ばかりであるのは事実だった。
それとも、意外に多いのかな、女以上に男は表沙汰にしづらいし、したって回りの理解
が得られるなんて思えないし。力づくで女に犯られたなんて、信じて貰えないか、笑い
ものにされるか、どっちかだもんな・・・。
そんな、あてどない事をベッドの中で、1日考え続けていた。食欲もまったく、湧かな
かった。ただ、1日転がったままでいた。
次の日、彼はとりあえず、会社に出てみる事にした。とにかく、気分転換が必要だと考
えたのだ。『一日、ベッドで泣き伏してるなんて、振られたばかりの女の子みたいだも
んな。』
だが、恐れていた通り、あの女はやはり来た。今日こそは、と思っていたものの実際に
その場になると、結局何も出来ず、更に、おとといの事まで思い出されてしまい、つい
に気分が悪くなった浩次は、いつもより随分手前の駅で電車を降りてしまった。
ベンチで必死に気分を落ち着かせていると、目の前に黒い革のコートを着た女が立って
いるのに気付いた。『まさか・・・』その悪い予感通り、あの女であった。気にならな
い振りをして、必死で立ち去ろうとする彼の耳元で女が囁いた。「あなた、マゾでしょ
う。」少し、低めのハスキーな声と、釣り合わないそのセリフに彼の足は一瞬ふらつい
た。それを予測していたように、すかさず彼に腕をまわすと大きな声で
「だから、無理しないでって言ってるでしょう。もう少し休みましょう。」言うなり、
女は浩次を無理矢理またベンチに座らせた。
何か言おうとする彼を制して、「隠しても駄目よ。手首のあの痣、今は直ったみたいだ
けど、縛られた跡でしょ。」やっぱり見られてた・・・あの時の女か。ショックを隠せ
ない彼を見て、冷たい笑みを浮かべた彼女は、こう続けた。
「だから、お尻を触ったりして、反応を試したの。そしたら、案の定、反応はいいし、
何をされても拒まないし、目が合っても何も言わないし。あぁ、やっぱりって思ったわ。
自分じゃ、そうじゃないと思い込もうとしてるみたいだけど、無駄よ。あなたは、完全
にマゾヒストなのよ。人から陵辱されないと、快感が得られない変態なのよ。」
彼女のセリフが、死刑宣告のように彼の心に突き刺さった。『そんなバカな、俺がマゾ?
そんな事ある訳が・・・』必死で葛藤している彼に、女は言った。
「近くにちょっと場所を取ってあるの。そこで、ゆっくり話しましょう。ここじゃ、落
ち着けないでしょ。」
確かに、気が付くともう、ラッシュの時間帯も過ぎようとしており、駅の人影もまばら
になり始めていた。それでも、腰を上げようとしない彼に、彼女はとどめを刺した。
「なんなら、会社で噂を立ててあげてもいいのよ。××情報サービスのさとうこうじサ
ン。」そのセリフに思わず、ぎょっとして彼女を見上げた浩次に、
「ちょっと調べれば直ぐに判るのよ、こんな事は。」と、女は冷たく言ってのけた。
駅からタクシーに乗り、耳にした事のあるシティホテルの名を女は運転手に指示した。
もう逃げる事も出来なかった。逃げても会社に連絡されて、変な噂でも立てられれば、
おしまいである。
ホテルに着くと、女はカウンターでキーを受け取り、彼の腕をとりエレベータに無理矢
理押し込んだ。「往生際が悪いわよ」女のセリフが、また突き刺さる。
仕方なく部屋に入ると女は、浩次を備え付けのソファに座らせた。意を決して、浩次は
女に尋ねた。
「あんた、一体何者なんだ。俺をいったい、どうする気だ。」
女は、「フフッ」と軽く笑うと、こう言った。
「決まってるじゃない、あなたを調教するのよ。あたしは、Sだからね。マゾといって
も、まだ、それ程経験があるようじゃあないし、あの反応からして、苛めがいのあるい
い奴隷になると思うの。すごく楽しみだわ。」
「ふ、ふざけるな、なんでお前なんかにそんな事されなきゃなんないんだ。そこまでさ
れて黙っていられるか!」
女は、軽く見下すように笑うと、「じゃあ、出て行ったら?」と浩次に告げた。そう言
われなくても、彼は出て行くつもりだった。会社が何だってんだ、その気になりゃあ、
何したって生きていけるさ!浩次はすっかり、頭に来ていた。振り向いて出て行こうと
した彼に、ふと女が言った。
「あら、これ忘れ物じゃない?」
「え・・・あっ?!」
思わず振り返った彼の顔面に何か霧状の物が吹きかけられた。いきなり、全身から力が
抜けた。
「う・・・・・。」
必死で顔を上げると、スプレー状のものを手に、していたマスクを取ろうとする彼女の
姿が目に入った。
「な、何・・・を・・・・」口もろくに廻らない。とにかく、身体のどこにも力を入れ
る事が出来なくなっていた。
「素直ねぇ、あなた。こんなにきれいに引っかかるなんて。これはね、暴れたりする患
者を沈静させるためのガススプレーなの。もっと、たっぷり吸い込んじゃうと気を失っ
てしまうけど、適量だと身体に力が入れられなくなる位の状態にできるのよ。ちょうど、
今のあなたみたいに、ね。知り合いの医者から手に入れたんだけど、彼女もサディスト
なのよ。その内、紹介してあげるわ。」
女は満足そうに笑みを浮かべると、浩次の身体をベッドの上に引き上げた。見掛けによ
らず、結構な力持ちだった。「今時の女は、フィットネスクラブで鍛えてるから、そこ
らのひ弱な男より余程逞しいのよ。」みすかしたように、女が言った。
「さあ、じゃあ着ているものを脱いでしまいましょうね。・・・人に脱がされるのって、
どんな形でも恥ずかしいでしょう。ほら、赤くなってる。そのうち、こういう事が堪ら
なく嬉しくなるようにしてあげる。さ、上着を脱いでネクタイ取って・・・、ほら手が
邪魔よ、ワイシャツのボタンを外すんだから。そう、いい子ねぇ、あら、やっぱりアン
ダーシャツは着てないのね、こないだも・・・」と言ったあと、女は一瞬しまった、と
いう顔をしたが、直ぐ気を取り直して
「まぁ、いいわ、どうせ直ぐに判るんだし・・・」
浩次には何の事か判らなかった、ただ、為すがまま、服を脱がされていった。女は、機
嫌がいいのか、クールな見掛けによらず、饒舌だった。
ついに、靴下、ズボンも脱がされてしまい、トランクス1枚にされてしまった。ズボン
のファスナーを女に降ろされた時、最後の砦が破られたような、なんとも無防備になっ
た気がした。
「さて、残るはパンツだけ・・・。」言いながら、女はゆっくりとトランクスのゴムを
引き下げだした。「もう少し、もう見えちゃう・・・あー、ついに全てをさらけ出され
てしまいました!」女は楽しそうに、実況中継風に言葉を続けた。「こうなっては、も
う駄目です。恥ずかしくても、隠す事はできません、それとも、隠す気はないのでしょ
うか。それでは、ただの露出狂の変態野郎です。・・・ねぇ、そうなの?」きかれても、
まともに喋れない彼に答えられるはずもなかった。
「これじゃあ、恥ずかしいでしょうから、何か穿かせてあげるわ。わたし、結構優しい
のよ。」
言いながら、女は、いきなり履いていたパンストとパンティを脱ぎだした。そして、
「ほら、あたしのシミ付きパンティ、うれしいでしょう。」彼の顔のあたりで2、3回
ひらひらさせると、直ぐに彼にそのパンティを穿かせた。「さっき電車で、あなたを触
ってる時、すっかり濡れてきちゃったから、少し湿っぽいでしょ。ほら、少しは嬉しそ
うに笑ったら?」確かに、脱ぎたてのそれは、生暖かくて湿っぽかった。
女は、浩次の胸のあたりに馬乗りになった。コートを脱いだ下には、モヘアの白いミニ
のワンピースを着ていた。そのふわふわの毛が、妙に擽ったかった。
「ねぇ、信じられないかも知れないけど、女だって男に欲情する事があるのよ。あぁ、
この男を身動きできないように縛り上げて、顔にぐちょぐちょに濡れた自分のオマンコ
を無理矢理こすりつけたい。そして、この男のペニスを思う存分、嬲り尽くしたい・・・
なんてね。」言いながら、彼女は彼の乳首をゆっくりと愛撫しだした。最初はあの薬の
せいか、何も感じなかったが、まずい事に段々快感に変わり始めた。更に女は前屈みに
なると、手では愛撫を続けながら、舌で彼の耳や鼻や唇を舐め始めた。身体を動かす事
が出来ない彼は、その行為を止めさせる事もできないまま、次第に気持ち良くなってき
てしまっている事に気がついていた。女は何ともいやらしい笑いを浮かべ、「ね、感じ
ちゃってるでしょう。」と耳元で囁いた。
と、突然起き上がり、彼の鳩尾あたりにずんと、体重をかけ直すと、「こないだの、あ
の跡って恋人につけられたものでしょ」と、いきなり決めつけてきた。反応できない彼
に、「実は、友達の女刑事から聞いたんだけど、最近、恋人とかごく親しい女友達に犯
られちゃう男が増えているらしいの。だけど、男って馬鹿だから、へんなプライドとか
世間体とか気にしちゃって、まず100%訴えたり、警察に駆け込んだりはしないそう
よ。まぁ、その辺は女も一緒みたいだけど。で、なおかつ必死で隠すらしいから、噂に
もなりにくいらしいのね。で、味を占めた女は、また、次の犯行に走る、と。だから、
世間で言われてるより、結構深刻な問題になってるらしいわ。彼女も、実はサドなんだ
けど、レイプは被害者が女だろうと男だろうとあんまりにも可哀相だから、いくらプレ
イでも絶対出来ないって言ってるもの。ちゃんと合意してから、一つの遊びとしてと、
まず自分を納得させてからじゃないと駄目なんだって。最近、レイプされたいなんて男
が増えてきてるみたいだけど、どんなにつらい事か知らないからそんなバカな事言える
んだって、本気で怒ってたわ。」
と、自分のしている行為を棚に上げてそんなことを言った後、少し間を置くと
「で、こないだの日曜日は、あの女子高生たちも言ってたけど、女物の服でしょ、コー
トなんかピンクなんだもの、すぐばれちゃうわ。でも、そんなもの貸すんだから相手は
見知らぬ仲じゃない、で良く見ると、首筋とかに凄いキスマークとか、噬んだ跡があっ
たのね。だから、あぁ恋人にレイプされて、その時服もずたずたにされちゃったんだな、
って思ったの。シロートさんは恐いから、加減を知らないから。ね、図星でしょ。」
彼はただ、首を横にふることしかできなかった、が自然と涙が零れてしまっていた。
「あら、ほんと純真ね、泣いてるじゃない。ますます、気に入ったわ。」彼の顔を覗き
込みながら笑顔でそう言う彼女であった。
そんな事を聞いている内に、次第に身体に少しづつではあるが、力が入りはじめている
のに気がついていた。
『もう、少し・・・もう少しで、ちゃんと身体が動かせるように・・・。』そうすれば、
逃げる事だって・・・
と、その時、いきなりアラーム音がした。
彼女も一瞬ビックリしたように、身体を起こし、
「あら、もうこんな時間?」そして、一旦彼の上から降りると
「ねぇ、そろそろ身体が動かせるようになってきてるでしょ。」女の指摘に、ビクッと
した彼を見て
「ふふ・・・。前に一度話しをゆっくりしすぎて、薬が切れるのすっかり忘れた事があ
ったの。で、いきなり飛び掛かられて、とっさに空手の型が出ちゃってね、その人の肋
骨折っちゃった事があったのよ。」女は、思い出し笑いをしながら、
「その時は、さすがにマズったわ。とにかく、何とか示談にしてお金で決着つけたられ
たから良かったけど。」
言いながら、ハンティングワールドのボストンバッグから皮製の拘束具を出してきた。
「それ以来、ちゃんとアラームをかけるようにしてるの。勿論、これも用意してね。」
笑顔で、その拘束具を指し示した。その恐ろしげなものがどういうものなのかは、彼に
は判らなかったが、どちらにしても自分にとって心地良いものではない事だけは、はっ
きりと判っていた。
それがどういうものなのか、直ぐに判る事になった。彼女は、浩次をうつぶせにすると
腕をとり後ろに思いっ切り引っ張ると、その拘束具で両の腕を身体の後ろで合わせるよ
うに縛りつけてしまったのだ。更に、その拘束具の紐をしっかりと引っ張って締めるよ
うにした。腕の関節が背中の所でほとんどくっ付きそうになるまで、強く腕全体を拘束
されてしまい、その痛さに思わず顔が歪む。
「これを女の子につけると、胸が思い切り前に出てきて乳首とか責めるのにいいのよね。
もっとも、男でもおんなじだけだけど。」言いながら、女は後ろから腕をまわすと彼の
乳首をいきなり抓った。腕を後ろに引っ張られ胸が張っている事により、その痛さは倍
増する。
「あっ、痛っう!」
浩次は、その痛みに思わず涙目になっている。
「ね、痛いでしょ。」女は、相変わらず彼の乳首の辺りを愛撫しながら、余りの痛みに
シーツに顔を押し付けている浩次の顔をにこやかに覗き込んだ。
「ここであんまり声を出されても困るし、お楽しみはこれからだからね。」言いながら、
彼の背に乗ると後ろから巧みにボールギャグを口に押し込んだ。
そして、彼の身体を起こすと両足首に拘束具をつけ棒のような物に固定し、大股開きの
状態にしてしまった。腕を後ろに引かれ、足は前で開いたまま拘束されてしまっている
今の彼の姿勢は、かなりきついものである。ただ、こうしているだけで体中が痛い。お
まけに、口にギャグを噛まされていて、声もロクに出せず、呼吸も辛くなってきていた。
「さあ、これでいいいわ。」女は満足したように、笑みを浮かべた。それは、まるで子
供のように無邪気な笑顔だった。
「ああ、やっぱり背中も白くてキレイね。鞭の跡が奇麗に残るわよ。嬉しいでしょ。写
真にも、はっきり写る位ね。」
浩次は、ぎょっとして顔を上げた。そんな浩次を楽しそうに見つめながら、
「だって、そうしないと逃げちゃうじゃない。でしょ?折角、手に入れた獲物を簡単に
逃がす訳にはいかないわ。それにいい記念になるわよ。感謝してもいいほどよ。」そう
いうと女は、カバンからオートフォーカスの一眼レフカメラを取り出し、
「まずは、記念すべき一枚め。」
いうなり、シャッターをきった。思わず、顔を背ける浩次だが、その窮屈な姿勢にまと
もに動く事はできなかった。
「実はアタシ、プロのカメラマンなの。最初は、仕事でこういうの、撮ってたんだけど。
その内自分でもやりたくなって・・・。で、こうなった訳。」
女はそういって、半切りサイズの写真を取り出してきた。そこには、革の拘束具で全身
を締められ、車輪のようなものに逆さまに磔にされていたり、台のようなものにお尻を
突き出すように、固定されたうえ、血が滲むほど尻を鞭打たれていたり、大きなディル
ドを腰につけた仮面の女に後ろから思い切り突き上げられて、泣き叫んでいる男達の姿
が写っていた。
「あなたにも、すぐこういう事を受けさせて上げるからね、楽しみにしててよ。」女は、
相変わらず楽しそうに笑い声を上げた。
そんな女を見上げながら、浩次は次第に頭がぼうっ、としてきた。呼吸もままならない
上に、こんな異常な体験により心拍数も上がってきていた。が、その時ヒュッと風を切
るような音がしたかと思うと腹に鋭い痛みを感じた。
「うっ・・・。」ギャグのために、声にならない声を上げる浩次に女が言った。
「痛いでしょう。でも、まだ鞭の味を憶えて貰うのはこれからよ。そのうちに、痛みが
快感に変わって行くの。そして、鞭で打たれただけでイケるようになるわ。どくどくと、
あのいやらしいものを噴き出すのよ。随喜の涙と身体中の赤い鞭の跡といっしょにね。
その時、あなたはアタシに感謝するようになるのよ。こんな素晴らしい世界を教えて頂
いて、有り難うございましたって。」
(ふざけるな、誰がそんな事!)だが、声を出せない彼は、何も反論することが出来な
かった。女は、そんな浩次に構わず、身体中をその細身の鞭で打ち据え続けた。思い切
り振っているようには見えなかったが、細身のせいか痛みは鋭いものだった。知らず知
らずの内に涙が零れていた。そのせいもあってか、更に全身の痛みのためか、次第にま
た頭がぼうっとしてきた。今度は鞭の痛みにも、大きく反応する事も出来なくなってい
た。
気が付くと、女は鞭打つのをやめて、彼の写真を撮っていた。だが、もう彼には、そん
な事はどうでも良くなっていた。腕や足も痺れ、身体中は痛みに火照っている。頭は、
もうジーンとしっ放しで何も考えられなくなっていた。考えられる事といえば、
(もう、駄目だな・・・。写真まで撮られちゃ、逃げらんないや。この女の言われるま
まに、・・・ 女達に好きなようにされるのか・・・。由梨子・・・・、もう逢えない
かな・・・。こんな事になった男に用があるとも思えないし・・・。もう、どうでもい
いや・・・。)
こんな自暴自棄な事ばかりだった。流す涙は、痛みによるものばかりではなかった・
・・。
女は、そんな浩次の反応を見ながら、
(もう、限界かしら。まだ、これからなのにな・・・。でも、ほとんど始めてじゃ、
仕様がないか。ちょっと休ませてから、様子を見る事にしよう。)
ベテランらしく、冷静に判断していた。
どの位時間が経ったのだろう、浩次が正気に戻った時には、窓の外はもうすっかり夕暮
れの装いとなっていた。気付くと、腕の拘束具は外されており、足の縛めも解かれてい
た。そして、口に嵌められていたギャグも。ただ、背中で手首を縛られ、足首もきっち
り揃えて縛られてはいたが。
「あ、あぅ・・・。」あまりのショックに口をまともに動かす事が出来ないものの、な
んとか言葉らしきものは発する事に成功した。
「あぁ、良かった。気が付いた?もし、あと一時間も気付かなかったら、医者の友人を
呼ぼうかと悩んでたとこなの。どう、気分は・・・。あ、無理に喋らなくていいわよ。
だいたい見れば判るから。うん、・・・大丈夫そうね。初めてだったの、こういう攻め
は・・・。そう、まぁ、徐々に慣れて行く事ね。大丈夫よ、下手なSMクラブよりノウ
ハウはしっかり持ってるから、身体を壊すような事にはしないわよ。」
女はそう言うと、彼の顔に手を伸ばした。思わず、避けようとする浩次だが、まだ縛め
を解かれていない彼に、逃れる術は無かった。
「大丈夫よ、欲求不満のそこいらのヤバい女じゃないから、変ななんかしないわよ。こ
ういう時は、ね。・・・あなたって、ちょっと興奮して肌が朱がかった時って色っぽい
わよ。アタシが男なら、その場で犯しちゃいたい位。そんな事、いわれた事ないでしょ。
・・・でも、あなたの恋人って、気付いてたかも、ね。喜ぶべきなんじゃない?女が犯
したくなるような男って、そんなにいるものじゃないわよ。今日は無理たがら、この次
はそっちで楽しませて貰おうかしら。今日もいい声でナいてくれたし。ほんと、そそら
れるわ、あなたって。どこで憶えたの?」
女の、そんな言い草をただ聞いているだけの自分は、確かに情けなかった。女の欲情を
誘ったって・・・、身体を売って生きてるわけじゃないんだから。それに、それでレイ
プされるんなら、そんなものは無い方がいい。浩次は真剣に、そう思っていた。
「もう、いいじゃないか。放っといてくれよ。どうせ、もうアンタの言いなりになるし
かないんだ。アンタの好きにすればいい。」
「ふふ・・・。つまりは、そう思っていないってことね。その方が、いいわ。楽しみが
増えるもの。やっぱり、嫌がる相手を無理矢理調教していくのが、サディストの醍醐味
なんだから。見込んだ通りの男だったわ、あなたって。あぁ、早くあなたの口から、ど
うぞお願いします、もう待ちきれませんなんてセリフを聞いてみたいものだわ。」女は、
その口元に笑みを浮かべて浩次にそう告げた。
結局、その日はそのまま帰された。これ以上の責めは、無理だと彼女が判断したため
だ。それでも、住所と名前、電話番号を最後に金玉を責められた挙げ句言わされて、も
う逃げ出す事は出来なくなったのも、事実だった。
その後は毎朝、彼女の嬲りものになりながら、会社へ通う事になった。そして、向こ
うの気が向けば、夜や休日に呼び出されて、更に弄ばれる事が判っていても断る事もで
きないような身分になってしまっていた。それでも、彼には更に過酷な運命が待ち受け
ていた・・・。
<Part4へ続く>
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