girl beats a boy

ぼくの御主人様 
Text by オルフェ
Home index guest Links bbs info.
Prev Next

 ひょんなことから、ある奇怪なパーティーへ参加するはめになってしまった。
 きっかけは彼女へのプロポーズだった。
 彼女とは仕事の縁でつきあいだしたのだが、じつは、かつて、同じW大の政経学部に
籍を置く学友だった。ただ、当時はめったに口をきくこともなく、たんに憧憬の対象で
しかなかった。というのも、学生時代はひどいコンプレックスに悩まされていたからだ。
 ぼくは、身長が160cmそこそこ、痩せてる上に童顔で、二十歳すぎても、よく女の
子に間違われていた。友人の間でも常にそれがからかいの対象で、学生時代のぼくは暗
く、鬱屈していた。
 ところが彼女はというと、176cmの長身に、ショートカットというルックスで、男
どもより女の子の取り巻きが多く、ある種、近寄り難い雰囲気をもっていた。実際、そ
の目を見張るような美貌と、モデル並みのボディーに惹かれて、ときにナンパを試みる
無謀な男もいるにはいたが、たいがいは彼女のひと睨みで、すごすごと退散するしかな
かった。
 噂によれば、それでも言い寄るしつこい男には手をあげるという話で、それも平手で
はなく、まさに拳で、鼻の骨を折られた男もあったという。
 彼女の武勇伝はそれだけではなかった。よく学食で、ラグビー部や剣道部の猛者を相
手に腕相撲をする彼女を見かけたこともあったが、まさに連戦連勝、負けたシーンを見
た記憶がなかった。それもそのはずで、一見モデル並みの華奢に見えるボディーも、実
際は筋肉質で、長い二の腕や大腿部は、惚れ惚れするような、逞しく魅力的な曲線を描
いていた。並みの男がたちうちできる相手ではなかったのだ。
 まさに高嶺の花。ぼくなどは、声をかけることすらかなわなかった。ただ、顔見知り
ということもあって、たまに向こうから声をかけてきたが、それも、
「いつ見ても可愛いね、女の子みたい」
 という、友人たちの揶揄と何も変わらないものだった。
 それでも彼女への憧れは消えなかったが、一度だけ、教室で同席したときこんな言葉
をかけられたこともあった。
「男に迫られたことない?」
 ぼくの顔を覗きこむように彼女が聞いてきた。
「まさか……そんな趣味ないよ」
「君はそうでも、こんなに可愛いかったら相手がほうっておかないでしょ」
「だから、ぼくは、男は相手にしないんだってば」
「でも、無理やり襲われたら?」
 その言葉にぼくは憮然として、
「そんなこと、絶対させない」
 と少し気色ばんだが、その様子を見て彼女は、フフンと、小さく笑い、
「強姦される怖さがわかってないな。抵抗しきれると思ってんの、こんな身体で」
 と彼女は、指の長い大きな手で、ぼくの二の腕をつかむとからかうようにいった。
「ガリガリじゃない。筋肉ついてんの?」
 ぼくは恥ずかしさのあまり、カッとなって、彼女の手を振り払い、
「それでも抵抗するの!」
 と、つい大きな声を出してしまった。
 すると彼女は、口許から笑みを消し、
「抵抗できるかどうか、試してみようか?」
 と、今度はぼくを見下ろすようにいった。
「……えっ?」
 ぼくは不意を突かれたのと、彼女の真意を計り兼ねたのとで、一瞬、言葉をなくして
しまった。
 すると彼女は、ぼくの耳許に口を近づけ、魅力的な低音でささやいた。
「いつか、私が襲ってあげるよ、きっと」
 その言葉の衝撃はいまでも忘れない。
 が、それ以上に、彼女の端正な顔がぼくのすぐ間近に来て、そこで初めて嗅ぐ、彼女
の甘酸っぱい香りが強烈に鼻孔を刺激して、いいしれない興奮を覚えた。
 それ以後は、彼女の言葉と彼女の香りを思い出すたびに、身体の芯がほてり、下半身
が疼くようになった。
 しかし大学時代は、彼女とはそれっきりで何もなかった。
 卒業後、ぼくは通産省に入り、彼女は外資系の商社に入った。そして何年か経って、
片やキャリア官僚、片や官僚を接待するキャリアウーマンとして再会したのだ。
 学生時代と違い、いまは卑屈になる必要は何もなかった。それは高値の花だった彼女
の前でも変わらない。学生時代は、いつも彼女に見下ろされていたぼくが、今度は逆に
彼女を見下ろしているのだ。
 ぼくはことさら役人らしく、横柄に、自信たっぷりの対応をして見せた。そして、な
かば仕事とバーターするかたちで彼女のプライベートにも割り込み、強引にプロポーズ
へとこぎつけたのだ。それだけに、断わられてもダメモトのプロポーズだったが、意外
にも、彼女の返事はOK だった。
 ただし、条件が三つあった。一つ目は夫婦別姓を認めること。二つ目は、家事やその
他いっさいをフィフティーフィフティーにすること。そして三つ目が、あの奇怪なパー
ティーに参加するということだった。
 ぼくはその条件を、一も二もなく呑んだ。もちろん本心は、彼女には仕事を辞めても
らい、専業主婦として家庭に収まってほしかったし、ぼくと同じ姓を名乗ってほしかった。
しかし、この男性社会では、いくら男勝りな彼女でも、いずれは限界を感じて夫である
ぼくに仕えるようになるだろう。そんな思惑もはたらいた。しょせん彼女は妻(添え物)
でしかなく、ぼくが“主人”なのだから。

 パーティーの会場は、郊外にある古びたホテルだった。ひと気がなく、営業している
のかどうかもわからないほどひっそりとしていた。
 その入口で、女性が二人立って、ぼくたち二人の到着を待っていた。二人とも彼女と
同様に大柄で、スポーティーというか、マニッシュな雰囲気をもっていた。
 彼女の説明では、パーティーの内容こそ秘密だったが、主催のメンバーは、みな彼女
の女子高時代の友人という話だった。もともとは彼女も体育会系だから、おおかた、か
って運動部で活躍した連中なのだろう。そう考えれば、みな一様に、大柄でマニッシュ
なのも納得がいく。
 彼女は、入口でぼくと別れ、幹部らしい女性の一人と連れ立って奥へ消えてしまった。
残されたぼくは、もう一人の女性に案内されて、更衣室らしい部屋に連れて行かれ、そ
こで着替えるようにいわれた。もちろん着替えなど、持ってきてはいなかった。
 すると、それを見透かしたかのように、
「ここにあるの、どれでもいいから。別に無理にとはいわないけど、あなたも帰るとき、
着るものが何もないと困るでしょ」
 と、とっさには理解できないことを、すかさず案内嬢が付け加えた。
 しかし、その部屋にあったのは、女性用のワンピースとスカートだけだった。
「着替え終えたら、地下のラウンジに降りてきなさい」
 そう命令口調で言い置いて、案内嬢は部屋を出て行った。
 ぼくは何のことかさっぱりわからなかったが、彼女から事前に、何があっても指示ど
おりに従うよう言いつけられていたので、ここはワンピースであれ、スカートであれ、
素直に着替えるしかなかった。
 赤いプリーツのミニスカートに着替えながら、ふと以前、彼女がこんなことをいって
いたのを思い出した。
 大学時代の昔から婚約した今日まで、ぼくは彼女のスカート姿を見たことがなかった。
カジュアルであれスーツであれ、パンツ姿しか記憶になかった。一度そのことを彼女に
確かめたら、やはりスカートの類は一着も持ってないといって、こう付け加えたのだ。
「あんなもの、本来は男が穿くものよ。だいたい男がズボンを穿いたんじゃあ、股間の
イチモツがじゃまだし、蒸れるでしょ。機能的にみても、ズボンは女のもの、スカート
が男のものなのはわかりきってるじゃない」
 そしてぼくにも、家にいるときくらいはスカートにしなさい、といったのだが、さす
がにそれは勘弁してもらった。しかし実際、二人ともすでに故人だが、民芸の宇野重吉
は、家庭でくつろぐときは決まってスカートだったそうだし、暮らしの手帳の名物編集
長だった花森安冶は、銀座の往来を歩くときでもスカートだったと聞いている。やはり、
スカートは男に合っているのだろうか。
 そんなことを考えながら、スカートに穿き替えて、ぼくは地下のラウンジに降りてい
った。
 パーティーは、もう始まっているようだった。階段の降り口にまで、ラウンジでの嬌
声が聞こえてきていた。
 ぼくは、そのあまりの無防備さに、嫌な予感に襲われ、おそるおそるラウンジを覗い
てみた。すると案の定、何組もの男女が入り乱れてまぐわっていた。が、よく見ると、
下になって嬌声をあげているのは、みな男だった。上になって男のように腰を使ってい
るのは、みなガッシリした体つきだが、紛れもなく女だった。
 彼女たちは、みな腰に、立派な擬似ペニスをつけていた。ある女は仁王立ちになり、
その前に男を跪かせてフェラチオさせ、またある女は、いやがる男を組み伏せて馬乗り
になり、おとなしくなるまで殴りつけていた。またある女は、スカートを穿かせたまま
で男を四つん這いにさせ、そのスカートを捲り上げて尻を打擲し、指をアナルに突き立
てて楽しんでいた。
 その光景に、ぼくは言葉もなく凍りついてしまった。そして自分がスカートに穿き替
えさせられた意味を悟った途端、全身に震えが襲ってきた。
 ぼくは反射的に更衣室に逃げ出していた。早くズボンに穿き替えて帰らなくては。そ
れしか頭になかった。
 ところが更衣室に戻ると、そのあとを追うように、若い男がバタバタとやってきた。
彼はスカートではなく、ふつうのスラックス姿だったが、呼吸は荒く、目は血走ってい
た。
「オラ〜! 逃げるんじゃねえよ!」
 そのすぐあとを追って、今度は女が入ってきた。やはり長身で、スイマーのような逞
しい上半身をしていた。そして、やはり腰には、巨大な擬似ペニスが屹立していた。
「逆らっても、ケガするだけなのがわかんねえのか!」
「だから……」
 男は半泣き状態でいった。
「……ぼくが何をしたっていうんですか」
 男は170cmそこそこ、日本人としては十人並みの体型だろう。ところが女の方は、
そんな男を優に見下ろしていた。
「したんじゃない、これからされるんだよ!」
 女はそういって男に飛びかかると、あっというまに捩じ伏せ、ズボンのベルトを外し
にかかった。
「やめてください! やめてください!」
 男は泣き叫んで抵抗したが、女は笑いながら、
  「だから、スカートに穿き替えれば面倒がないっていっただろ」
 と余裕でベルトを外し、ズボンを脱がせにかかった。
「やだ! やめて! お願い……許して」
 男は膝を曲げ、必死になって抵抗した。
「……しぶといヤロウだな」
 女はズボンから手を離すと、ドスッ、っと男の腹部に重そうな膝蹴りを入れた。
 男は堪らずに、もんどり打って倒れ、腹部を抱えて唸り声をあげた。
 すかさず女は、その男に馬乗りになると、パン! パン! パン! パン! と強烈
な往復ビンタを見舞い、
「おとなしくしないと、腕をへし折るぞ!」
 その恫喝に、男の口から泣き声が消えた。いや、口を開け、泣いてはいるのだが、恐
ろしさのあまり声が出ないのだ。
 ぼくは早くこの場から立ち去りたかったが、そのやり取りを間近で見て足が竦んでし
まい、まったく身動きが取れなかった。
 女はナイフを取り出すと、
「そんなに脱ぐのが嫌なら、そのままで犯ってやるよ」
 とズボンの股の部分を裂き、その下のブリーフも裂いてしまった。そして男を俯せに
させると、
「ほら、ケツを上にあげろ」
 と男に命じながら、屹立した擬似ペニスに手を添え、男のアヌスにあてがった。
 ぼくは小刻みに身体を震わせながらも、息をのんで次の光景を見守った。
 すると女は、やおらぼくの方を向き、ニヤッと笑いかけてきた。
「待ってろ、次はお前の番だからな」
 その言葉で、ぼくは我に返り、あわてて更衣室を飛び出した。ズボンを手にする余裕
などなかった。
 しかし飛び出したところで、隠れる場所も、逃げる手段も見つからなかった。思い余
ったぼくは、突き当たりにあるトイレに駈け込んだ。
 するとそこには先客がいて、鏡の前で化粧直しをしていた。ぼくより小柄で、長い髪
に、胸のふくらみもあったが、どう見ても男そのものだった。
 眼が合うと、彼は、
「新顔ね。どっち?」
 と訊いてきた。
「……どっち?」
「趣味? それとも矯正?」
「キョウセイ……って?」
「根性入れ替えるってこと。女をあまく見てる男を、フェミニストに改造するわけね」
「フェミニスト……」
「女権論者。間違っても女性にやさしい男、なんてなまやさしいもんじゃないのよ。……
このあいだなんか、ほら、以前カラオケボックスで輪姦やったラガーマンがいたでしょう、
ヤツらひとりづつ、ボコボコにされて、一晩中オカマ掘られたんだから。それも極太のペ
ニバンでしょ、みんなお尻が裂けて、股なんか血だらけよ。当分使い物にならないわね、
あれじゃ。でも、あれで女性に接する態度も、少しは変わったんじゃない?」
 彼の話を聞いて、ぼくは、彼女がこのパーティーへの参加を結婚の条件にした意味が、
なんとなく飲み込めてきた。
 しかし、いまは一刻も早くこの場を逃れることが先決だった。
 が、万事休す。また別の女が、このトイレにもやって来た。
「やっぱりここにいたのか」
 また、ぼくが見上げるような長身女性だった。褐色の、長く逞しい太腿は、ぼくのウエ
ストくらいはあった。
 その女を見て、小柄な女装男が科を作っていった。
「だって、トイレで犯られるのって、感じるんだもの」
 女は苦笑して、
「……変態め。じゃあ、お望みどおり犯ってやるから、ケツをこっちに向けな」
 男は洗面台に上半身を預けると、女に向かって尻を差し出し、自分でスカートの裾をま
くった。下着はつけていなかった。
 それを見て女は、
「用意がいいな」
 と、また苦笑して股間のディルドウに手をやると、チラッとぼくの方に目をくれた。
「見かけない顔だな、きょうが初日か?」
「えっ……は、はい」
 ぼくはガタガタ震えながら答えた。
「しかし、えらい美人だな」
 と女は感嘆の声をあげ、
「……嬲りがいがありそうだ。待ってろ、次に犯ってやるから」
 そういわれてぼくは、すぐさまトイレを出ようとした。ところがドアを開けると、先ほ
ど更衣室で男をレイプしていた、スイマー体型の女が立っていた。
「なんだ、ここにいたのか」
 ぼくはとっさに、その女の脇を擦り抜けようとしたが、それは無駄な努力だった。簡単
に襟首をつかまれ、カーペットの上に転がされてしまった。
 それでもぼくは、必死で逃れようと足掻いた。
 ところが女に、片手でぼくの足首をつかまれると、もう何も為すすべがなかった。空い
てる手足を力いっぱい振り回しても、女は動じる気配すら見せなかった。片手でぼくの足
首をつかんだまま、ただ黙って、ぼくの足掻くさまを上から見下ろしていた。
 女が楽しんでいるのがわかった。
 屈辱だった。相手は女、それも片手しか使ってないというのに、ほとんど無抵抗な自分
の非力が呪わしかった。
 しかしそれ以上に、男の自分が、このあと女から力ずくで犯されることを考えると、全
身の血が逆流する思いだった。
「いい眺めだな」
 女はそういうと、ぼくの白く華奢な脚に、空いてるもう片方の手を伸ばしてきた。そし
て、ふくらはぎから大腿部を丹念に撫で、脚の付け根までくると、
「可愛い尻してるじゃないか」
 と、ついに、ブリーフに手をかけてきた。
 ぼくは両手で女の手をつかみ、必死で抵抗した。
 ところが女は冷静なまま、
「……さっきの男みたいな目に会いたいのか」
 と冷たく言い放った。
 その途端、ぼくの全身から力が抜けていった。
 女はぼくのブリーフを剥ぎ取ると、ぼくを仰向けにした。そしてぼくの膝を割って、
ペニスのついた腰をゆっくりと入れてきた。巨大なディルドウが、ぼくの下腹部に当た
った。その瞬間、ぼくの身体を電気が走り抜けた。
 女はぼくの顔をまじまじと見て、
「その綺麗な顔で……、どんな声を出して泣くか……、考えるだけでゾクゾクしてくる
ぜ」と、ぼくの脚を持ち上げ、ディルドウの先をアナルにあてがった。
 ぼくは声もなく、ただ身体を震わせるしかなかった。
「……いくぞ」
 と女は、ひとこと低く呟くと、一気に押し入ってきた。
 あまりの衝撃に、ぼくはその場で気を失ってしまった。

 気がつくと、ぼくは全裸のままベッドに寝かされていた。
 見かけない部屋だった。たぶん、同じホテルの部屋なのだろう。
「お目覚め?」
 体を起こすと、目の前に、やはり全裸の彼女がいた。胸は小ぶりだが、均整のとれた、
筋肉質のみごとな身体をしていた。
「まったく、あいつは無茶ばかりするんだから」
 と彼女は、ローションをたっぷり手に取りながら、
「まだ痛む?」
 と訊いてきた。
 痛みというより、肛門がズキズキと脈打っていた。たぶん暫くは、椅子に座ることも
できないだろう。
「むこう向いて、お尻を出しなさい」
 彼女は、ローションを塗ってあげるからという素振りで、ぼくを促した。
 多少、気恥ずかしくはあったが、ぼくは言われるとおりにした。
 彼女の指が、ぼくのアナルに触れた。ローションが塗ってあっても、飛びあがるほど
痛かった。しかし、
「我慢しなさい」
 という彼女のひとことで、なんとか耐えることができた。
 ところが、そのあと彼女はつづけて、こういったのだ。
「最初はだれでも痛いんだから」
「……えっ?」
 と不審に思って振り返ると、彼女は自分のモノにもローションを塗っていた。そう、
彼女も擬似ペニス、ディルドウを腰につけていたのだ。
 ぼくの動悸が、一気に激しくなってきた。
 彼女は、そんなぼくの心中を察してか、
「心配いらないよ、あいつのよりふたまわり以上は小さいし、ローションもたっぷり塗
ったから」
 といって笑みを浮かべると、
「だいじな私のフィアンセだからね、キズものにはしないよ。ただ……」
 と、いきなりぼくの上に覆い被さり、手も無くぼくを組み伏せると、
「どっちが“主人”か、この際きっちり身体に教え込まないとな」
 と普段にも増して低音の、ドスの効いた声でいった。
 そのときの彼女の顔は、ぼくを仕事で接待するときに見せる、いつものOLの顔では
なく、かっての、大学時代に見せた、彼女本来の女豹を思わせる顔だった。
「いいか、よく聞け」
 つづけてそういうと、彼女はぼくの膝を割り、ペニスのついた腰を入れてきた。
「これからは、たとえ仕事の上とはいえ、私に向かって生意気な口をきくことは許さな
い」 そしてディルドウをぼくのアヌスにあてがうと、
「わかったか!」
 と一気にぼくを貫いてきた
 肛門に再び激痛がはしった。ぼくは大声をあげ、渾身の力で彼女から逃げようとした。
しかしどちらも不可能だった。彼女の右手がぼくの口を塞ぎ、そして左手が、ぼくの両
腕を頭の上に押さえつけていたからだ。しょせん、ぼくの力では、彼女にかなうわけが
なかった。しかも、アヌスに差し込まれた彼女のペニスは、まるでぼくの全身を貫いて
いるかのようで、まったく抵抗する気を起こさせなかった。
 それでもぼくは、激痛のあまり、足をバタバタさせ、大粒の涙を流さざるをえなかっ
た。すると、それを見て彼女は、
「じっとしてろ! しばらくじっとしてれば、痛みは治まる」
 といって、彼女自身も、しばらく腰を動かすのをやめた。
 不思議なもので、しばらくしたら本当に痛みが和らいできた。するとそれを察したよ
うに、彼女もゆっくりと、再び腰を動かして始めた。
 今度は激痛というほどの痛みはなかった。が、アヌスに感じる異物感は、依然、抜き
難くあった。
「どうだ、女になった感想は?」
 彼女がからかうようにいった。
 しかしそのときのぼくは、本当に女になったような気分だった。たった十数センチの
ペニスなのに、まるで内臓をえぐられ、脳天まで貫かれたような錯覚を受けるのだ。全
身が、たった十数センチのペニスに支配された気分になるのだ。一度この感覚を味わっ
たら、そのペニスの持ち主に、二度と逆らう気など起きないだろう。
「……わかったか」
 今度は余裕の表情で、彼女がいった。
 いままで、こうして何人もの男を矯正してきた彼女にとっては、ぼくの内部におこっ
た変化を読み取ることなど、朝飯前に違いなかった。
「これが本物のチンポだよ。お前のチンポでは、こんな真似はできないだろう」
 確かに、短小包茎を絵に書いたようなぼくの持ち物では、どだい無理な話だった。
 彼女は、ぼくを押さえつけていた両手を離すと、
「よし、いくぞ!」
 といって、激しく腰を振り、次々に体位を変えて、ぼくを弄んだ。
 もはやぼくに、抗う気力はなかった。それより、むしろ彼女に弄ばれ、屈服させられ
ることに、いいしれない快感をを覚えるようになっていた。
 彼女の“妻”になろう、そう決心するのにたいした時間はかからなかった。

 ぼくは予定どおり、彼女と結婚した。ただ、当初の予定どおりだったのは、その結婚
したことだけだった。通産省は退官し、姓は彼女のほうを名乗り、家庭に入って、家事
のいっさいをぼくが引き受けることにした。彼女に、仕事以外のことで煩わせることの
ないよう気を遣いたかったからだ。なんといっても、文字どおり、彼女がぼくの御主人
様なのだから。
  (完)

ぼくの御主人様
Text by オルフェ
Prev Next
Home index guest Links bbs info.
ご感想をぜひ掲示板に!