死闘・まもるVSヨーコ
Text by mampepper
PART-3

3ラウンド開始のゴングが鳴っても、まもるはしばらく椅子から立ち上がれなかった。
「ほら、どうしたのッ!」
ヨーコの強烈な左フックが、座ったままのまもるの顔面に決まった。
椅子がガタン、と横倒しになって、まもるはマットの上に横転した。
まもるの顔がマットに沈むその一瞬前、ヨーコはつま先でそのアゴを蹴り上げた。
「うぎゃっ!」
ズザザザァ〜〜ン……
まもるは両手両足を上に突き上げた格好で、リングの上を数メートルも背中で
滑っていき、ブレイクダンスでも踊るように数回転した。
(う……ふう……ね…姉…ちゃ……ん……)
アゴを痛撃されたまもるは、朦朧とした意識の中で、姉の幻を見ていた。
(オ…オレが……負けたら……ね…姉…)
まもるは、ほとんど本能だけで、ふらっと立ち上がった。
もう、腕も顔をガードする位置まで上げられないような状態であった。
ロープにもたれかかり、その足はガクガクと震えている。
「ほらっ!ヒザがゆるんでるわよ!」
ヨーコは左右のローキックでまもるを揺さぶると、まったく無防備の状態だった
まもるの股間に前蹴りをたたきこんだ。
「ひ……ぎ……ぇぇぇっ……」
(ジョォォォ……)
サード・ロープに腰を下ろしたような格好のまま、まもるは失禁した。
あまりの苦痛にダウンすら出来ないまま、まもるはブクブクと泡をふいた。
「ふふっ。上と下から漏らしちゃうなんて。カワイイ」
中腰の姿勢のまま昇天したまもるの股間を、
ヨーコはその美しい足の甲で優しく撫でた。
「いっ……ひいいいっっっ……」
ただ撫でられるだけで、まもるは電撃を受けるような苦痛と快感を感じた。
ひとたび萎えていたまもるの男根が、またピクンと勃起した。
「……あれ…キミ、タマタマ、ないよっ……」
まもるの睾丸は完全に腹の中に食い込んでしまっていたのである。
「ふふふ、タマタマがなくても立っちゃうもんなのね、男のコって」

(ね…ね…え……ちゃ……んっ……)
「もう少し、楽しませてくれなきゃね!」
まもるの顔面に、ヨーコのヒジ打ちの連打が容赦なく襲いかかった。
「ひっ…ぶっ!……」
まもるの顔が、衝撃にグシャリと醜く歪んだ。
「ぐっ…はあぁっ!……」
何発めかのヒジ打ちで、まもるは口の中から紅く汚れた塊を吐き出した。
それは、血まみれのまもるのマウスピースだった。
マウスピースは、ヨダレと血の糸を引きながらリングの外まで飛び出し、
ボトリと転がった。
「あああっ………」
半ば意識を失って、倒れこもうとするまもるの額に、
もう一発、強烈なヒジが食い込んだ。
バッ!
まもるの額がパックリと裂けて、鮮血が噴き出した。
まもるはまるで頭から紅いペンキでも浴びたようになって、
そのまま前のめりに、ヨーコにもたれかかった。
(………あ……ああっ……あ……)
ヨーコは、まもるの体を意外なほど優しく抱きとめた。
「…キミ、大丈夫?」
(…う…うう……ね……ねえ……ちゃ……んぅ……)
「何、ひとりでブツブツ、わけのわからないこと言ってんの?」
(……ねえ……ちゃ……ん……た……たす……け……)
「キミ、いつまでしがみついてる気? 
 アタシのコスチュームが、キミの汚い血ヘドで汚れるんだけどなあ」
(はあ…はあ…はあ…)
「なっ!」
気合いとともに、ヨーコはまもるのガラ空きになった腹めがけて、
ヒザ蹴りを叩き込んだ。
「ぐはっっ……!」
まもるの両足が、足の裏をのぞかせてマットから浮き上がった。
「えいっ!」
ヨーコはさらにもう1発、追い討ちのヒザ蹴りを、まもるの腹にブチかました。
(うううっ……!)
まもるはガクン、と膝を折って、腹を両腕でかかえ、
土下座するような格好でマットの上に座り込んだ。
「うげええええええええ〜〜〜〜っっっっっっっっっっ…………」
まもるはたまらず、口から血の混じったゲロを吐き出した。
「あら、今度は神聖なリングを、ゲロで汚す気?」
「げええええっ…………」
腹をえぐられるような激痛に悶絶するまもる。
少しでも体勢を動かすと、耐えられない吐き気が襲ってきて、
口からゲロがわき水のように噴き出してくる。
自分の吐き出したゲロが顔にこびりつき、つーんとする臭気が鼻をつく。
あまりの苦しさに、まもるは涙を流した。
「あ〜あ、とうとう泣いちゃった。どうしたの、キミ? 
 まるで手も足も出ないわね」
まもるはヨーコの嘲笑に、必死で耐えた。

カーン。

3ラウンド終了のゴングが鳴っても、
まもるはまだリングの中央にひれふしたままだった。
いっそ気絶でもできればよほど楽なのに、
内臓からこみあげる不快感がそれを許さない。
「まあまあ…なんてブザマなかっこう。もうこれでおしまいかしら?」
そういうと、ヨーコはリングに四つん這いになってまもるの顔をのぞきこんだ。
(ふうう……ふううううっ……)
インターバルの1分間がすぎ、4ラウンド開始のゴングが鳴らされた。
「ねえ、いつまで寝てるの? ボク、おっきしましょ?」
(うぐううううううっっっ……はっ……)
血とゲロにまみれたの空手着の襟首をつかんで、
ヨーコはまもるを強引に立たせようとした。
途中で空手着はずるりと脱げ、
上半身裸になったまもるはまた崩れるようにマットに沈んだ。
「あらあら、仕方がないわねえ……ほら、忘れ物よ」
「おっ…おぶううっ……!」
まもるは突然、口の中に違和感を感じ、激しい吐き気に襲われた。
ヨーコはまもるのマウスピースを拾い、
それを彼の口の中に強引に押し込んだのである。
まもるの黄色い胃液が、ヨーコの指を濡らした。
「あらあら、今度は私の手まで汚す気?」
まもるは何とかマウスピースをくわえ、
セカンドロープに手をかけてゆっくりと立ち上がった。
「ほら、アタシはここよっ!」
その声に何とか反応して振り向いた瞬間、
強烈な左フックがまもるの顔面を打ち抜いた。
「ぐはっ!」
まもるは糸のきれた操り人形のようになりながら、
全体重をロープに預けるようにしてふっとんだ。
リバウンドで返ってくるところに、前傾姿勢で待ち構えていたヨーコは、
閃光のようなアッパーを叩き込んだ。
「がっ……!」
まもるの首から上が大きくのけぞり、くわえたばかりのマウスピースが再び吹っ飛んだ。
まもるは、両足を浮かせ、ロープを軸にして、
まるでスローモーションのように回転した。
トップロープとセカンドロープの間に両手と首をからませて、
まるでハリツケのようになった
無惨なまもるの姿がそこにあった。
「うっ……ううううう〜〜〜っっっっっ……」
言葉にならないうめき声を出してあえぐまもるに、ヨーコの鋭い蹴りが襲いかかった。
強烈なミドルキックの嵐で、まもるの胸は紫色に変色していた。
下腹部に蹴りを入れられ、再びまもるは股間を自分の小便で濡らした。
「……随分、水っぽいコね。そろそろ限界かしら」
ヨーコはわざと力をセーブした軽いジャブを数発、放ったが、もうまもるからは何の
反応もなかった。まもるの顔面は倍ほどにも腫れ上がり、ヨダレと血で汚れ、
目鼻の区別さえにわかにはつけられないほどだった。
ヨーコはまもるの首と腕にからみついたロープをほどくと、その場に崩れ落ちようとする
まもるのアゴをめがけて、飛び膝蹴りをたたきこんだ。
「…………ふっ……………」
ゴキッ、という鈍い音とともに、まもるはむしろ、
それまでの苦痛から解放されたような、安堵のため息をもらした。
あまりにも強烈な蹴り。まもるの体はトップロープを飛び越して、空中で一回転し、
場外へたたき出されていた。
ズッ……ズウ〜〜ン……
衝撃で部屋全体が揺れた。
後頭部から落ちたまもるは、完全に白目をむき、場外で失神した。
最後の一撃でアゴがはずれたのか、
顔の下半分が通常では考えられない角度で歪んでしまっていた。
鼻は無惨にひしゃげて、血がとめどなく流れていた。

ヨーコはゆっくりとリングから降りると、鮮血にまみれたまもるを見下ろし、
その顔に足を乗せた。まもるはもうピクリとも動かなかった。
「…やっぱり、最終ラウンドまでは無理だったようね。でもまあ、頑張った方かしら。
 今のオネエちゃんの姿を知ってたら、とてもここまでは持たなかったわよね」
ヨーコはそう言って、パチリと指を鳴らした。
ギイイ、とドアが開いて、全裸の女が現れる。
それは、まもるの姉のミドリだった。
その首には、黒い鉄製の首輪がはめられていた。
ミドリはヨーコに近付くと、その足下にひざまずき、ためらいもなくその指を
丹念に舐め始めた。
「……ふふ、アンタの弟が汚したんだから、アンタが責任もって、キレイにするのよ」
「……はい……ご主人さま……」
ミドリはまもるの垂れ流した血とヨダレと小便で汚れたヨーコの足を愛撫した。
焦点を失ったその目は、もはや人間のものではなかった。
「…ふふふ、可愛い娘」
そう言うと、ヨーコは大の字のまもるの胸の上に腰をおろした。
「……これで、オスの方も揃ったというわけね……」
嗜虐の歓びに打ち震えながら、ヨーコは舌舐めずりをした。
まもるはこれからの自分の運命も知らず、昏々と深い眠りの中に漂い続けていた。
(終)


(後記)
いや、どうも、打撃系が陥りやすいパターンにハマってしまったかな、と
反省しきりです。私は打撃系の格闘技の経験がないので、体の動きとか
痛さの質とか、具体的にはわからないのですね。そこで想像力が試される
わけですが、う〜む。
最後まで読んでいただいた方々、感謝です。
感想等ありましたら
Mampepper@aol.com
まで。
(感想等は まで)

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